2020 Fiscal Year Research-status Report
新しい等時性調整方法の確立による宇宙元素合成過程の解明
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19K14751
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
洲嵜 ふみ 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究職 (70779727)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イオン蓄積リング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、理化学研究所の稀少RIリングにおける質量精密測定のために、新しい等時性の調整方法を確立することである。稀少RIリングは、宇宙の元素合成の1過程であるRプロセスの解明のため、Rプロセス経路上の核の質量測定を行う。高精度の質量測定のためには、等時性場(異なる運動量を持ついかなる粒子も同じ周期でリングを周回する状態の場)が高い精度で成立する必要がある。稀少RIリングでは、高精度の等時性場の調整のために、リングを周回する粒子の周回周波数(周回周期と逆数の関係)を検出する検出器である共鳴ショットキーピックアップを利用してきたが、これを用いた手法は高い真空度のリングにおいては利用できない。そのため、運動量を任意に変更するRFキャビティを新規に作成し現存の共鳴ショットキーピックアップを組み合わせて新しい等時性調整方法を確立することを目標としている。当該年度は新しいRFキャビティ設計のための構想、現存の共鳴ショットキーピックアップについての総括論文の執筆、11月に行われた稀少RIリングの実験における現存の共鳴ショットキーピックアップの試用を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本補助事業の目的は、新規RFキャビティ製作と現存の共鳴ショットキーピックアップの組み合わせにより、稀少RIリングにおける質量精密測定に重要な等時性状態を調整する手法を開発することである。現存の共鳴ショットキーピックアップの総括となる論文執筆や、今年度下旬に行われた稀少RIリングにおける実験から、目的の等時性調整を確実に行うためには現存の共鳴ショットキーピックアップの測定可能な周波数領域の狭さがネックになるという示唆を得た。しかしながら、この測定可能な周波数領域の狭さが高感度を保証するため今後の展開については慎重に議論する必要がある。当該年度重点を置いていた論文執筆が完了しなかったため総合的に、「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度以降は、本研究の目的である新しい等時性質量測定方法の確立のために、現存の共鳴ショットキーピックアップの論文執筆を完成させる。また、令和3年度は本補助事業の折り返しの年次でもあるため、稀少RIリングにおける等時性調整方法を確実に行うための開発を行い、RFキャビティの製作は次のステップとする、という方向修正も視野に入れて研究を推進する。
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Causes of Carryover |
当該年度に予定していた実験や研究会への参加がキャンセルや延期となったため、これらに係る費用が次年度使用額として生じた。次年度使用額は延期された研究会への参加に係る費用や実験に係る費用として使用する。
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