2020 Fiscal Year Research-status Report
eROSITA・すばる・京大せいめい望遠鏡で探る超巨大ブラックホールの成長史
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19K14759
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鳥羽 儀樹 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD) (40825957)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 超巨大ブラックホール / すばるHSC / eROSITA衛星 / 赤外線天文衛星「あかり」 / 活動銀河核ダストトーラス |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙に普遍的に存在する超巨大ブラックホールの成長史を探るため、本年度は下記に述べるような研究成果を得た。 まず、超巨大ブラックホールおよびその母銀河が最大成長期に対応すると期待される可視光線では「見えない」が赤外線では明るく輝く赤外線銀河の系統的探査を行なった。日本の赤外線天文衛星「あかり」で重点的に観測された天域に着目することで、583個という史上最大数の候補を発見した (Toba et al. 2020c, The Astrophysical Journal に出版済み)。 次に、超巨大ブラックホール成長の質量供給源として着目されているダストトーラスの研究を実施した。本研究では、中心核からの輻射圧で駆動される “polar dust” がダストトーラスの構造を司る要因の1つとして重要であること示した。3万天体以上の活動銀河核をサンプルに polar dust を組み込んだ先駆的なスペクトルエネルギー分布解析を通した統計的な手法による研究成果である (Toba et al. 2021a, The Astrophysical Journal に受理済み・出版は令和3年度)。 さらに、 我々が探査を進めている赤外線で極めて明るい (赤外線光度が太陽の10^14倍) 銀河のX 線の性質を2019年に打ち上がったばかりのeROSITA衛星のチーム内公開データを用いて調べた。日本の「すばる」望遠鏡に搭載されたHyper Suprime-Cam (HSC) チームとの国際共同研究であり、HSC-ROSITA 活動銀河核国際研究チームとして初めての科学論文である (Toba et al. 2021b, Astronomy & Astrophysics Letters に受理済み・出版は令和3年度)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 可視光線で「見えない」赤外線銀河の系統的探査: 近年、可視光線では検出できないが、赤外線やサブミリ波などでは明るく輝く optically-dark赤外線銀河が銀河と超巨大ブラックホールの共進化における重要天体として注目を集めている。そこで我々は日本の赤外線天文衛星「あかり」が重点的に観測した領域に着目し、583個の候補の発見に成功した。 2. “Polar dust” を考慮した活動銀河核ダストトーラスの中心核遮蔽率の研究: SDSSで同定された 3万天体以上の活動銀河核について、中心の超巨大ブラックホールを取り巻くダストトーラスの中心核遮蔽率が活動銀河核のどのような物理量で決まるのかを統計的な手法を用いて調べた。Polar dust まで含めた解析を実施した点が新しい。その結果、polar dust 成分を考慮した方が、考慮しない場合と比べて 中心核遮蔽率のエディントン比依存性(相関係数)が強くなるということが分かった。 3. eROSITA 衛星で探る極超高光度赤外線銀河の中心核の物理: 私は活動銀河核部門の責任者としてプロジェクトが円滑に進むように従事しながら、赤外線光度が10^14太陽光度を超えるような極超高光度赤外線銀河のX 線での性質を調べた。X 線から遠赤外線までのSED 解析を実施し、この天体の母銀河の性質を算出した他、X線および可視光線のスペクトル解析からこの天体の中心核の性質を調べた。特に興味深いのは、この天体の赤外線光度は極めて大きいにも関わらず、水素の柱密度は小さいという天である。これは中心核からの放射により超巨大ブラックホール近傍のガスは吹き飛ばされて(少なくとも視線方向には)存在せず、中心核からやや遠いところに存在するダスト由来の放射はいまだに卓越していることを示唆している。 上記の結果は全て査読論文として発表済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は下記の3つを重点的に進めていく予定である。 1. eROSITA衛星とすばるHSCを用いた活動銀河核の性質調査: 来年度は、ある天域に着目したeROSITA/X線データの最終版がチーム内に公開される見込みである。その中でも特に成長途上期にあると期待される活動銀河核 (2千天体ほど発見できる見込み) に着目する。スペクトルエネルギー分布およびX線スペクトルの解析から、超巨大ブラックホールおよびその母銀河の性質を調べる。また、HSCが持つ良質な可視光画像データを用いて、中心核成分と母銀河成分の分離を試み母銀河の正確な星質量も測定する。さらにeROSITA衛星でも検出できなかったような活動銀河核についてもスタッキング解析により、それらの典型的なX線の性質を調べる。 2. 京都大学「せいめい」望遠鏡を用いた 銀河合体が果たした共進化への役割の解明: 2019年2月から運用を開始した「せいめい」を用いた研究を推進する。銀河と超巨大ブラックホールの共進化を司る物理を探る上で重要な現象である「銀河合体」に着目し、銀河合体ステージごとにシステムに付随する電離ガスの物理化学状態を詳細に調査する。既に近傍の活動銀河核の面分光観測データは概ね取得済みである。特に電離ガスアウトフローや、ブラックホール/星生成活動の度合いを空間的に調べたい。来年度には初期観測成果を論文として出版することを目指す。 3. 可視光線で「見えない」赤外線銀河の系統的な分光追観測: Toba et al. (2020c) で見つかった可視光線で見えない赤外線銀河は、まだその天体までの距離が正確には分かっていない。そのため発見された銀河の各種物理量(光度・質量・超巨大ブラックホールや母銀河の活動度など)は不明のままである。そこで「すばる」やGeminiなど、8m-class の望遠鏡を用いた分光観測を実施したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で、国内外の出張がゼロになったため。 コロナの状況次第であるが、国内外での発表や研究打ち合わせ、天体観測などを目的とした出張が可能になればそれらの旅費に充てる予定である。 また、来年度も査読論文が少なくとも3本は出版できる見込みのため、その出版費用に充てる。
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Research Products
(42 results)
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[Journal Article] The eROSITA Final Equatorial-Depth Survey (eFEDS): An X-ray bright, extremely luminous infrared galaxy at z = 1.872021
Author(s)
Toba Yoshiki, Brusa Marcella, Liu Teng, Buchner Johannes, Terashima Yuichi, Urrutia Tanya, Salvato Mara, Akiyama Masayuki, Arcodia Riccardo, Goulding Andy D., Higuchi Yuichi, Inoue Kaiki T., Kawaguchi Toshihiro, Lamer Georg, Merloni Andrea, Nagao Tohru, Ueda Yoshihiro, Nandra Kirpal
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Journal Title
Astronomy & Astrophysics Letters
Volume: -
Pages: -
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Subaru Hyper Suprime-Cam view of quasar host galaxies at z < 12020
Author(s)
Ishino Toru、Matsuoka Yoshiki、Koyama Shuhei、Saeda Yuya、Strauss Michael A、Goulding Andy D、Imanishi Masatoshi、Kawaguchi Toshihiro、Minezaki Takeo、Nagao Tohru、Noboriguchi Akatoki、Schramm Malte、Silverman John D、Taniguchi Yoshiaki、Toba Yoshiki
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Journal Title
Publications of the Astronomical Society of Japan
Volume: 72
Pages: 83 (1-16)
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] How does the polar dust affect the dust covering factor of AGNs?2020
Author(s)
Yoshiki Toba, Yoshihiro Ueda, Poshak Gandhi, Claudio Ricci, Denis Burgarella, Veronique Buat, Tohru Nagao, Shinki Oyabu, Hideo Matsuhara, Bau-Ching Hsieh
Organizer
Probing the Extragalactic Universe with High Energy and Very High Energy Sources, NECO online workshop
Int'l Joint Research
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