2019 Fiscal Year Annual Research Report
ガスの超高空間分解能観測で明らかにする、銀河進化におけるブラックホール成長過程
Project/Area Number |
19K14763
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
大西 響子 愛媛大学, 宇宙進化研究センター, 研究員 (10804073)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 銀河進化 / 超巨大ブラックホール |
Outline of Annual Research Achievements |
銀河の進化過程は近代天文学における主要な未解決問題である。全ての銀河中心には超巨大ブラックホール(Black Hole; BH)が存在するとされ、銀河とBHが影響を及ぼし合いながら進化する事(共進化)が観測的に示されてきている。銀河とBHの共進化を明らかにする事は宇宙の基礎構成要素である銀河の形成進化過程の解明において極めて重要な意味をもつが、これまでに共進化の具体的シナリオは数値計算からのみ提案されてきた。 そこで本研究では、BH近傍へのガス流入過程を過去最高の空間分解能で観測し、力学モデルを用いて、BH成長率をこれまでになく精密に見積もることを目的とした。最終的にはBH成長率と母銀河との関連性を明らかにし、共進化過程におけるBH成長の詳細を観測的事実から初めて定量的に解明することを目指した。 具体的な業績としては、銀河に広く存在する分子ガスである一酸化炭素(CO)を用いて観測した20天体を、BH近傍を分解する高空間分解能で描画し、剛体回転の力学モデルを当てはめて流入の起こる位置を明らかにした。また、この流入運動を力学的に定義するために流体力学モデルを導入し、分子ガスの複雑な運動を明らかにするモデルの開発に取り組んだ。ここまでの研究内容は現段階で論文にまとめている途中であり、オンサラ天文台のセミナーで発表を行った。 一方で、BH近傍では分子ガスがより高密度になることを踏まえ、COより高密度の分子ガスを観測できるシアン化水素(HCN)の輝線を使用した研究も行った。HCNの高空間分解能観測が行われた天体NGC 1257について、高密度ガスの運動からBH質量を導出した。この天体ではHCNは回転運動しており、流入などによる摂動を示さないことが確認できた。この研究内容は、申請者を第二著者とした学術論文で発表し(Nagai et al. 2019)、複数の国際研究会でも結果を発表した。
|
Research Products
(5 results)