2019 Fiscal Year Research-status Report
Identification of ionized gaseous halos in distant galaxies with extremely deep data
Project/Area Number |
19K14766
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
嶋川 里澄 国立天文台, ハワイ観測所, 特任助教 (20823321)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 銀河 |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画はすばる望遠鏡が5年以上に渡って実施している戦略的サーベイによって得られた超広視野データを駆使し、約40億光年にある星形成銀河から放たれる水素の再結合線(輝線)を銀河外縁部まで捉えることを目的としたものである。すばる戦略サーベイではこのような銀河の水素の再結合線を捉えることのできる、狭帯域フィルターを使って撮影されたデータが含まれており、これを該当する全ての銀河で足し合わせることで、個々の銀河では全く見えなかった淡い輝線構造が初めて見えてくることが期待される。 昨年度は当初予定していた通り、すばる戦略枠コミュニティに対してその時点で利用可能であったデータを基にした策定中の輝線銀河カタログを活用することで試験的解析を実施した。使用する輝線銀河は合計でおよそ8千天体にも及び、すばる望遠鏡によって構築されたかつてない広視野データの強みを最大限に活かすことができた。結果は当初の期待に及ばなかったものの、銀河が放つ輝線を裾野にあたるおよそ30キロパーセク外側の方まで検出できる兆候を確認できた。この当初の想定との乖離はデータの大元となっている、戦略的サーベイによる狭帯域フィルターデータの深さが同計画の目標値よりも0.5等から1等浅いことが主な要因であることが考えられる。これは研究計画調書に記載の通り、ある程度想定範囲であったものの、これが原因で当初10万天体近く使用する予定であった輝線銀河サンプル数が10分の1程度にとどまってしまったこと(それでも先行研究から見れば極めて多い数ではあるが)が結果として大きく作用した。本結果は銀河外縁部で起こる微弱な星形成活動、もしくはより中心付近の電離領域から放たれる電離光子が外側まで漏れ出ていることを示す直接的な証拠である。結果の一部は国内研究会の招待公演にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本計画に取り掛かるに際し、すばる戦略的サーベイによる大規模データに深く触れたことで、当初想定していなかった、本計画の遂行を補完するアプローチが新しく生じた。結果、当初の想定より解析作業が増大するだけでなくより複雑化したため本計画の進捗に影響している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度策定中であった解析に必要な輝線銀河カタログが昨年度末に完成したため、今年度初めからは本解析を開始し、秋ごろまでに主要な結果を取りまとめる。昨年度の試験解析の際に、現状の解析マシンでは研究を進める上でパフォーマンスが十分足りていないことが把握できたため、より高度な解析環境の構築を本事業の予算を通じて早期に進める。また上に記載の通り、本研究計画を進めるにあたって補完的な解析案も生じたことで、現在本計画の結果を学術成果として取りまとめる際に、これらの研究案の結果の一部も取り入れた、一つの大きな成果としてまとめることを検討している。そのため、当初今年度夏に予定していた学術誌投稿のタイミングを年度終盤に延期する。
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Research Products
(1 results)