2022 Fiscal Year Research-status Report
将来観測に適応可能な銀河団の統計モデルと銀河団質量の精密測定
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19K14767
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
白崎 正人 統計数理研究所, 統計思考院, 助教 (70767821)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 超銀河団 / 重力レンズ |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、銀河団に関する2つの研究を行なった。1つ目の研究は、すばる望遠鏡戦略枠による銀河撮像観測「Hyper Suprime Cam」(HSC)サーベイで観測された銀河カタログをもとに、銀河とダークマターの二次元地図から、複数の銀河団が連なる超銀河団と呼ばれる天体を赤方偏移0.55で発見し、超銀河団の構造を詳細に調べたものである。宇宙論的構造形成のシミュレーションを利用した模擬観測結果と比較すると、観測された超銀河団(通称キングギドラ超銀河団)は太陽質量の10の16乗倍の質量を持つと推定され、観測可能な宇宙に存在する天体の中でもトップクラスの巨大構造であることが明らかになった。2つ目の研究は、アタカマ宇宙論望遠鏡の宇宙マイクロ波背景放射の観測で検出された96個の銀河団の周辺の質量分布を、すばるHSCサーベイの観測データを用いて詳細に調べた研究である。この研究では、すばるHSCで検出された銀河の像が、前景の銀河団重力によってコヒーレントに歪むという重力レンズ現象を利用し、銀河団の総質量を推定した。さらに、銀河団ガスと静水圧平衡から予想される質量との違いを詳細に調べたものである。解析結果は論文の形にまとめられており、現在HSC重力レンズワーキンググループ内での内部レビューの段階にある。HSCコラボレーションの取り決めのため、内部レビューにある段階で、結果の内容について記載することは差し控える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、2022年度で全ての解析を終え論文を公表するはずであったが、HSC銀河観測の解析結果の解釈に時間がかかったことの影響を受け、アタカマ宇宙論望遠鏡で検出された銀河団の重力レンズ解析については2022年度内に論文を公表することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
アタカマ宇宙論望遠鏡で検出された銀河団の重力レンズ解析については、現在解析を終え、HSCコラボレーションの内部レビューの段階にある。レビューの結果を受け、フィードバックにしかるべき対応をしたのち、2023年度前半までには論文を投稿し、年度内に論文の掲載受理を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症により想定した国内出張と海外出張が全て見送らざるを得なかったため、次年度使用額が生じた。学会参加のための国内出張費と、論文の出版費として利用する。
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