2020 Fiscal Year Research-status Report
高解像度円偏光観測と氷実験:生命のホモキラリティの起源の理解に向けて
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19K14775
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
權 靜美 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (60724094)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 星形成 / 星周構造 / 円偏光 / ホモキラリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
星形成領域における赤外円偏光の観測は、可視光観測では吸収が大きすぎる高密度領域において、直線偏光だけでは得られない磁場やダストの性質に関する情報を与えるだけでなく、生命のホモキラリティの議論の上でも重要となる研究課題である。本研究では、研究代表者がこれまでに行ってきた赤外円偏光観測の大き な拡張として、(A)星形成領域に加え、惑星形成領域における赤外円偏光観測と、(B)円盤中の氷物質に円偏光を照射することによって生成されたアミノ酸ホモキラリティの室内実験を国際協力により行う。そして、宇宙起源の生命のホモキラリティの統合的描像を提言する。さらに、円盤の構造・ダスト・磁場の物理情報を得ることによって、円盤中のダストの成長や磁場の役割を解明する。 本研究の観測面における新規点は赤外円偏光観測を高解像度化する事である。これにより惑星系形成領域である原始惑星系円盤の観測を可能にする。円盤における円偏光場を世界で初めて赤外線波長においてマッピングし、円盤における円偏光の大小、惑星形成領域の微細な空間構造・磁場構造・ダストについての情報を 得ることができる。 今年度はとりわけIRCS用偏光用装置の円偏光試験観測を継続した。その結果、複数の天体において高解像度円偏光データを取得することに成功した。低解像の既知の円偏光領域との比較を行い、偏光パターンが合致することも確認した。 さらに、IRSFにおける偏光サーベイの結果や、サブミリ波を含む多波長の偏光観測による星形成領域の磁場構造の論文を多数出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者らによる円偏光観測はこれまでもIRSF望遠鏡で精力的に行われてきたが、本申請の観測面における新規点はすばる望遠鏡を用いて赤外円偏光観測を高解像 度化することにより惑星系形成領域である原始惑星系円盤の観測を可能にすることにある。 IRSF望遠鏡における偏光観測は自然シーイングである1秒角程度であるが、原始惑星系円盤の観測には、0.1秒角程度の解像度が不可欠であり、すばる8m望遠鏡と補償光学の利用が不可欠である。これまでに、IRCS用偏光用装置の円偏光試験観測の遂行、校正用円偏光子製作、論文化のための検討が進んでおり、これは当初の予定通りである。よって、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、すばる望遠鏡における試験観測の結果を出版するとともに、すばる望遠鏡における年2回程度の偏光観測を遂行する。さらに、IRSF望遠鏡を用いた偏光観測と協力研究者との実験も継続する。海外渡航については今後のコロナ禍の動向を見極める。個々の天体の結果を順次出版し、適宜プレスリリースも行う予定である。 最終年度には、観測全天体の系統的な議論を行い、論文としてまとめる。観測と実験の結果を統合し、宇宙起源の生命のホモキラリティの統合的描像の提言を行う予定である。
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Causes of Carryover |
理由:研究会がオンライン化されたため。 計画:今年度の研究会で使用。
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Research Products
(16 results)