2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K14777
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 雅彦 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (50723277)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 斜長石 / 離溶磁鉄鉱 / 火星 / 古惑星磁場 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、斜長石中に含まれる離溶磁鉄鉱の磁気的性質を用いて、火星地殻に含まれる離溶磁鉄鉱が記録している磁場記録を読み解く事で、形成初期における火星の磁場強度を推定する。2019年度には、火星地殻中における斜長石中の離溶磁鉄鉱量推定を目的として各種測定(磁気測定、電子顕微鏡測定、放射光測定)を行なった。道志ハンレイ岩体およびオマーンオフィオライトのハンレイ岩を単結晶まで破砕し、実体顕微鏡を用いて斜長石単結晶を採取、塩酸処理をして結晶表面に付着する鉱物片等を取り除いた後に各種の測定を行なった。高知大学海洋コア総合研究センターの交番磁場勾配磁力計を用いて斜長石単結晶試料の磁気ヒステリシス測定を行い、斜長石単結晶中に含まれる磁鉄鉱量を計算した。東京大学に設置した電子天秤を用いて斜長石単結晶の質量を測定し、磁気測定から得られた磁鉄鉱量を使って斜長石中の磁鉄鉱含有量を計算した。磁気測定に用いた斜長石試料を樹脂埋め・研磨した後に、産業技術総合研究所の電子顕微鏡を用いて斜長石中の鉄含有量を測定し、SPring-8におけるX線吸収微細構造測定によって斜長石中の鉄価数や配位環境の情報を得た。これらの測定により、斜長石単結晶中に含まれる磁鉄鉱含有量と鉄化学種の関係について様々な情報を得ることに成功した。Rhyolite-MELTSソフトウェアによるマグマ中から晶出する斜長石の組成の計算結果および実験から得られた斜長石中の磁鉄鉱含有量と鉄化学種の関係を用いて、火星地殻における斜長石中の磁鉄鉱量の予察的見積もりを行なった。また、斜長石中の離溶磁鉄鉱の残留磁化獲得効率の計測に向けて、磁気測定に用いる実験装置(超電導磁力計、各種の消磁装置)を東京大学に設置して、その立ち上げ作業を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では事業期間中において、以下項目の実施を計画している。(1)斜長石単結晶試料を用いた各種測定を行い、その結果から火星地殻中に含まれる斜長石中の離溶磁鉄鉱含有量を推定する。(2)斜長石試料の熱残留磁化着磁・測定実験を行い、その結果から斜長石中の離溶磁鉄鉱の残留磁化獲得効率を求める。(3)1と2の結果から火星地殻の残留磁化獲得効率を求め、人工衛星の観測値から得られている残留磁化強度の情報を用いて火星の磁場強度を推定する。2019年度は、項目(1)に該当する、各種の岩石試料中に含まれる斜長石単結晶試料を実験用に準備、斜長石単結晶試料を用いた磁気測定・電子顕微鏡測定・放射光測定、火星地殻中における斜長石中の離溶磁鉄鉱含有量の予察的見積もりを実施した。また項目(2)に該当する、斜長石試料の熱残留磁化着磁・測定実験に用いる実験装置の設置および実験準備作業を実施した。事業期間中において、項目(1)と(2)の残りの内容の実施、項目(1)と(2)の成果を用いた項目(3)の実施が十分に可能な進捗状況にあると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、斜長石中に含まれる離溶磁鉄鉱の磁気的性質を用いて、形成初期における火星の磁場強度の推定を行う。そのために、残りの事業期間中において以下の内容を実施する。 (火星地殻中に含まれる斜長石中の離溶磁鉄鉱含有量の見積り)火星地殻組成および酸素分圧のデータを用い、Rhyolite-MELTSソフトウェアを使用して火星地殻中に含まれる斜長石の量と組成を計算する。また岩石メルト中の酸素分圧-鉄価数の関係および岩石メルト-斜長石間の鉄分配関係を用いて火星地殻中に含まれる斜長石中の鉄価数を計算する。これらの計算結果と斜長石中に含まれる鉄化学種と離溶磁鉄鉱量の関係から、火星地殻中に含まれる離溶磁鉄鉱量を見積もる。 (斜長石中の離溶磁鉄鉱の残留磁化獲得効率の決定)石英管内に斜長石および石英粉末を封入し、磁場中で加熱・冷却する事で熱残留磁化を着磁する。熱残留磁化を着磁後、超電導磁力計で残留磁化強度を測定し、斜長石中の離溶磁鉄鉱の残留磁化獲得効率を求める。 (火星の磁場強度推定)斜長石中の離溶磁鉄鉱含有量および離溶磁鉄鉱の残留磁化獲得効率の値から火星地殻の残留磁化獲得効率を求め、人工衛星の観測値から得られている残留磁化強度の情報を用いて火星の磁場強度を推定する。
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Causes of Carryover |
理由:コロナウイルスの影響により、研究成果の発表および議論を行うために参加を計画していた国際会議(36th International Geological Congress)が延期となったため、出張旅費が次年度使用額として生じた。 使用計画:2020年度に延期となった国際会議(36th International Geological Congress)に参加するための出張旅費として使用する。
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Research Products
(9 results)