2022 Fiscal Year Annual Research Report
探査機「あかつき」と地上望遠鏡で迫る金星雲層構造の新たな姿
Project/Area Number |
19K14786
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Research Institution | Hokkaido Information University |
Principal Investigator |
佐藤 隆雄 北海道情報大学, 経営情報学部, 准教授 (50633509)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 金星 / 雲層構造 / 探査機「あかつき」 / 地上望遠鏡 / 放射伝達 / 微量大気 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,金星の特徴でもある光学的に厚い雲層構造の時空間変動を,探査機と地上望遠鏡を用いて観測的に調査した. 探査機「あかつき」の2μmカメラ(IR2)の近赤外画像から導出した雲頂高度は,赤道対称構造をしており,低緯度では約71kmに位置し高緯度になるに従い下降することが分かった.これは,探査機「Venus Express」の時代から約10年近く雲頂高度分布が安定していることを示す結果である.また,「あかつき」により発見された山岳波に起因した定在構造は,雲頂高度にして数百m程度の高度差として表れることを初めて定量的に示した(Sato et al., 2020). 金星大気の主成分である二酸化炭素(CO2)の安定問題に関与する塩化水素(HCl)の時空間分布を把握するため,地上望遠鏡IRTFの高分散分光装置iSHELLで取得した近赤外分光データ(2018年8月と2020年8月)を解析した.同時観測したCO2の吸収線から得られた雲頂高度分布は,「あかつき」で得られた分布を支持する結果であった.雲頂高度付近(約71km)のHClは,明確な緯度依存性や太陽地方時依存性がなく,平均して0.38ppmvであった.これは先行する地上望遠鏡観測結果と一致したが,「Venus Express」の太陽掩蔽観測結果(雲頂高度付近で混合比にして1桁小さい)と反するものである.放射伝達モデル計算で必要となる仮定が結果に与える影響を定量的に評価したが,太陽掩蔽観測結果を再現することは困難であり,両者の違いは,実際のHClの時空間変動を反映しているのではなく,解析手法自体に原因があると考察した(Sato et al., 2023). 今後の研究方針としては,欧米の金星探査計画に向けて,地上望遠鏡を用いた近赤外高分散分光観測を継続実施するとともに,太陽掩蔽観測データを再解析することで,不一致問題の解決を図る.
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Research Products
(7 results)