2020 Fiscal Year Research-status Report
駿河湾における「有効拡散」の定量化とその湾内深層循環に与える影響の評価
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19K14792
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永井 平 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (60834489)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 駿河湾 / 乱流混合 / 内部潮汐波 / 地形性捕捉波 / 高解像度数値実験 / 乱流直接観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により当初予定していた「駿河湾におけるマルチスケール観測」を実施することができなかったため、昨年度に引き続きインドネシア海における乱流観測データを利用した「乱流混合の基本性質に関する議論」を行うとともに、大型計算機(Oakforest-PACS)を利用した「駿河湾を対象とした高解像度数値シミュレーション」を実施した。 インドネシア海における乱流観測データ解析からは、強い潮汐流が海底地形の急斜面にぶつかることで下流側に海底に捕捉されたジェットが形成され、それに伴うシア不安定/密度逆転が発生することで、周辺の乱流混合が著しく強化されることが明らかとなった。この結果は、急な海底斜面を持つ駿河湾付近の内部潮汐波励起および混合過程を議論する際に重要になってくる知見である。また、「駿河湾を対象とした高解像度数値シミュレーション」では、半日周潮(M2分潮)および日周潮(K1分潮)の外力を与えた実験について、それぞれの潮汐エネルギー散逸率を計算した。その結果、駿河湾内深層においては、自由波として伝播可能な半日周期の内部潮汐波よりも、慣性周期の制約により自由波として伝播できない日周期の内部潮汐波のエネルギー散逸が卓越するという興味深い結果が得られた。この要因を調べるため、駿河湾周辺の日周期の内部擾乱を調べたところ、伊豆半島の南東で励起された内部擾乱が「地形性捕捉波」として岸を右に見ながら伝播し、駿河湾内への入射した後、湾奥で反射することで、同湾内深層の流速場/乱流場を強化していることが示された。 これらの研究成果について、1 編の国際誌に発表し、1 件の国内学会(2021年度6月発表予定)での発表要旨が受理されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要でも述べたように、今年度は新型コロナ ウイルス感染症の影響により駿河湾での船舶観測を実施することができなかったため、数値シミュレーションを中心に、同湾内の乱流混合の発生過程について議論を行った。また、東京大学への次世代大型計算機BDEC Systemの導入が遅れており、当初予定していたLESを用いた数値シミュレーションを実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、数値シミュレーション結果から得られた知見をもとに、駿河湾における船舶観測を実施し、実際に駿河湾で発生している乱流混合の定量化、およびその発生機構の議論を行う予定である。また来年度、東京大学に導入される次世代大型計算機BDEC Systemを用いてLES実験を実施することで、有効拡散係数KVeffの定式化を図るとともに、駿河湾内での船舶観測結果との比較からその式の有効性の確認を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
現在までの進捗状況でも述べたように、新型コロナ ウイルス感染症の影響や大型計算機BDEC System導入の遅延により、今年度に予定していた駿河湾における乱流観測、およびLESを用いた数値実験を実施することができなかった。そのため、観測経費および大型計算機使用料として確保していた予算の一部を次年度使用額として計上し、2021年度に実施する観測の経費、およびLES実験のための大型計算機使用料として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)