2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of methods of melting and refreezing of snow, ice, and permafrost, and observation of snow cover change in the Arctic
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19K14796
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
ヌアスムグリ アリマス 国立極地研究所, 研究教育系, 特任研究員 (70710739)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マイクロ波放射 / 積雪 / 凍土 / 融解 / 凍結 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、雪氷からのマイクロ波放射を測定するための室内実験と野外実験を行った。 ①室内実験:各種温度帯での新旧の可搬型マイクロ波放射計MMRS2を用いて6GHz、18GHz、36 GHzの各周波観測値のシフトを調整するために、電磁波吸収体を用いた比較実験を行った。 ②野外観測:本研究では、雪氷域のマイクロ波放射が、気温変化や融解・再凍結、その結果は形成される氷板などによりどう変化するか、また積雪下の地面が凍ている場合にはどのような放射特性を示すかを明らかにし、北極域など極地でのマイクロ波観測の精度や多様な観測対象に応用できることを目指している。本年度は、積雪・凍土が存在する北海道東部の内陸寒冷地である陸別町の観測サイトにおいて、冬季にMMRS2で積雪や凍結地面を観測した。積雪・凍土中の温度プロファイルの動きとマイクロ波放射の動態を比較して各周波のマイクロ波放射の凍結・融解時の特性を把握するために、積雪の断面観測とともに、積雪表面及び積雪層内部と地面との境界まで、温度センサーを設置して、連続的な温度観測をおこない、マイクロ波の放射計による連続観測と比較をおこなった。積雪層の観測からは、雪温のプロファイルの測定と各層の積雪密度、雪質を測定している。これらの温度や積雪・凍土状態とMMRS2の出力結果と比較し特性を把握した。 観測期間中にマイナス20℃以下に及ぶ低温、プラスの気温による融雪開始、また強い降雪も観測でき、多様な積雪状態における多くのマイクロ波放射データが取得できた。さらに、人工的に氷板を作成し、氷板が積雪表面や内部にある時にマイクロ波放射が低下することを確認できている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、北極域の雪氷面融解・凍結、 積雪被覆の変化および凍土域の地表面融解・凍結について明らかにすることである。衛星GCOM-Wに搭載されているマイクロ波放射計と同様の周波数を持ち、36 GHz で積雪の表面変化、18 GHzで、積雪の内部変化、6 GHzで、積雪底部および積雪下の地表面の変化を検知する。特に、本研究では低周波6 GHzの有効利用を考え凍土域での積雪の遠隔測定の手法開発を目指している。このために、雪氷域からのマイクロ波放射を明らかにし、マイクロ波を使った雪氷観測精度を高めるための観測手法の開発を行う。 本研究では、36、18、6 GHzの3周波マイクロ波を観測する機器(マイクロ波放射計MMRS)を、極地での観測実験に持ち込む予定である。本年度は、同機器の動作および精度確認を行ったのち、冬季には、極地に近い低温及び積雪・凍結地面をもつ、北海道東部で2月、3月に観測実験を行った。 本研究では、北極域で進行する温暖化の影響を読みとる手法を開発することを目的としているが、積雪域の変化としては、積雪上への降雨とその後の再凍結による氷板形成など温暖化に伴う新しい観測課題がある。本年度の観測実験では、積雪中の氷板の存在によるマイクロ波低下を確認することが出来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
冬から春にかけて雪氷の変化が活発な時期に6 GHz MMRS2による航空機観測を実施し、各地形要素におけるマイクロ波放射の特性を観測し、AMSR2(分解能10 km)の衛星データと比較して、AMSR2の出力がなにを反映しているかを探る。②アラスカ大学の校内のサイトに6、18、36 GHz MMRS2を融解期前後に長期間 (約3週間)設置し、マイクロ波放射の応答の時間変化を記録する。③積雪・凍土の断面(各層の積雪密度、雪質および雪温のプロファイルの測定)を観察し、マイクロ波放射の振る舞いを説明することを試みる。④国内実験・観測との共通点と違いについて調べる。2021年度 スバールバルツンドラ域の秋・冬・春の現場観測スバールバル諸島については、すでに冬季に予察的な観測とそれと衛星データのとの比較を行っており、今回は、①ツンドラ域に3周波MMRS2を春先の凍結・融解前後の約3週間設置し、マイクロ波放射の季節変化を記録する。②AMSR2(分解能10 km)の衛星データと比較して、AMSR2の出力がなにを反映しているかを探る。③雪の穴を掘って、断面を観察し、マイクロ波放の融雪期およびその前後の振る舞いを説明することを試める。 ④スバールバルと国内との共通点と違いを明確にする。
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Causes of Carryover |
当初予定していた低温室実験及び北海道における観測で使用する機器の変更が生じたため、初年度の物品の調達を遅らせて、2年度以降の本観測に合わせた物品の調達を2年目に行うこととした。
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Research Products
(3 results)