2019 Fiscal Year Research-status Report
成層圏を介した太陽活動変動の地球気候への影響過程における遅延メカニズムの解明
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19K14798
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
野口 峻佑 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(環境変動予測研究センター), ポストドクトラル研究員 (90836313)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 太陽活動 / 北大西洋振動 / 極夜ジェット振動 / 地球システムモデル / 成層圏突然昇温 / 積雲対流 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽活動の11年周期変動に対する北大西洋振動(NAO)の応答が数年遅れて顕在化する過程の詳細を明らかにすることを目指し、以下の作業を行った。 (1)まず、この過程に対して懐疑的な論文が近年出版されたことを受けて、理想的な条件下で、この遅れ応答が存在することの確認作業を行った。気象研究所地球システムモデルによる、太陽活動度の変化のみが外力強制として取り入れられた長期間積分実験データを解析し、その結果、NAO指数のピークが太陽紫外線放射指数のピークに対して2-4年ほど遅れていることを実際に確かめた。同設定での複数の並行ランにおいても、同様の遅れ応答がみられることが確認できたため、本研究の検証対象過程は虚像ではない可能性が高い、という結論が得られた。 (2)気象研究所のスーパーコンピュータシステムの更新と課題代表者の異動を受けて、新たな数値実験環境の構築作業を行った。既存環境からのフォークによって、気象研究所地球システムモデルによる数値実験が可能であることを確認できた。しかしながら、旧環境からのリスタートファイル等の流用には障壁があることも判明した。 (3)次年度以降に向けて、ナッジング実験の仕様を模索・策定した。ひとまず大気大循環モデルのみを用いて、ナッジングの際の時定数や鉛直方向の重み係数を変更した各種アンサンブル実験を行い、成層圏循環を再解析データで固定しつつも対流圏循環を自由に時間発展させるための実験設定を定めた。 (3+)2019年9月に南半球で極めて稀な成層圏突然昇温が発生した。上記の例題として、この事例に対する擬似アンサンブル予測実験を行ってみたところ、突然昇温に伴う子午面循環の強化が、熱帯域の対流活動の有意な強化を引き起こす様子を捉えることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
環境変化への対応に時間を取られ、当初の想定通りではないが、着手可能なものから柔軟に対処することで、課題を進展させた。 (3+)に関しては、計画外ではあるが有益な結果であるため、各種検証実験を追加し、論文化作業を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
計画通り、高エネルギー粒子降り込みの効果に関する数値実験を行なっていく。ただし、本年度の作業(2)と(3)の結果を受けて、今後行う予定であった実験の難易度に変化が生じた。このため、計画段階では発展課題であった「成層圏循環変動を固定したうえでの海洋循環駆動の効果」に焦点を当てた数値実験を前倒して実施することも検討する。
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Causes of Carryover |
想定よりも物品費や論文掲載料が抑えられ、また年度末の出張も中止となったため。この分は、次年度のストレージ増強(HDD購入)に充てる計画である。
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