2020 Fiscal Year Research-status Report
成層圏を介した太陽活動変動の地球気候への影響過程における遅延メカニズムの解明
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19K14798
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
野口 峻佑 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(環境変動予測研究センター), ポストドクトラル研究員 (90836313)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高エネルギー粒子降り込み / 極夜ジェット振動 / 極渦強化 / 惑星規模波 / 北大西洋振動 / 大西洋子午面循環 / 南極周極流 / 長期予報 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)太陽からの高エネルギー粒子降り込みの効果に関するアンサンブル実験を一部行い、結果を解析した。晩秋に顕著な降り込みが起こった際の上空での化学組成変化とそれに伴う成層圏-対流圏結合変動の変調に関して、当初の仮説通りの結果を得た。 (2)昨年度の循環場拘束技術の洗練作業の結果を受けて、成層圏循環変動による海洋循環駆動の効果に関する実験を、前倒して実施した。北半球において成層圏周極渦が過去最大規模に強化され、北極域におけるオゾン破壊や中緯度での暖冬傾向とも絡んで注目を集めた2019/2020年冬季を対象に、地球システムモデルによる成層圏循環規定アンサンブル実験を行い、それを通常のアンサンブル実験と比較することで、成層圏からの下方影響の大きさと越年影響の可能性を調査した。結果、対流圏ジェットのシフトと北大西洋域における大気-海洋相互作用の活発化によって海洋子午面循環が駆動され、有意な越年影響が発現することが示された。しかしながら、同時に、対象冬季中の極渦強化の対流圏への下方影響の頑健性に関しては、惑星規模波の下方伝播などの不確実性が高い過程が絡むために、予測の文脈での期待には注意が必要であることも判明した。 (3)同実験データにおいて、2019年の南半球における成層圏周極渦の弱化(成層圏突然昇温)の下方影響に関しても調査を進めた結果、こちらも成層圏循環規定の効果が地表・海洋にまで及び、南極周極流の弱化とともに有意な大気-海洋結合変動の変調が起こることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度に前倒して行った(2)の実験は、昨年度の大気大循環モデル単独での実験と比べて積分時間が長く、またスピンアップなどの必要もあり、実行に時間がかかるものであった。これを、計算機事情を勘案しながら各種問題に適宜対処して年度内に完了し、有意な影響を示す結果を得られたことは、本研究課題の推進において重要なものであると考えられる。また、副次的に(3)のような結果も出ている。なお、昨年度の実験結果の論文に関しては、ハイライトされ、プレスリリースを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、長期積分データの統計解析を通じて(1)と(2)の過程の相対的重要度に関する調査を進めていく。それに際しては、(1)の過程における上空の化学組成変化と成層圏-対流圏結合変動の変調との紐付に関しては若干の懸念があることもあって、本年度は実験を一部に留めたため、この部分の見直しと可能ならば追加の実験も検討する。(2)の結果に関しては、(3)の結果とも合わせて、論文化を進める。
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Causes of Carryover |
感染症蔓延に伴う学会中止・延期により、予定していた出張がキャンセルとなったため。代わりに、予定よりも多くなった実験出力データの保存機器の増強に充てる計画である。
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