2021 Fiscal Year Research-status Report
高精度ウラン・トリウム同位体分析による貝を用いたウラン系列年代測定可能性再評価
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19K14805
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平林 頌子 東京大学, 大気海洋研究所, 講師 (40835641)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ウラン系列年代測定 / 放射性炭素年代測定 / 貝試料 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般に、二枚貝や巻貝などの軟体動物殻はU/Th年代測定の試料として不適格とされてきた。これは、軟体動物殻がウランに関する閉鎖系を保持しないことが原因と言われているが、近年の研究により、種によっては貝殻試料のU/Th年代測定が可能であることが示唆された。日本周辺に生息する貝殻試料を用いた検証は行われてない。さらに、ウラン系列核種の貝殻への取り込みプロセスや、貝殻のウランの閉鎖系が成立する条件は未解明である。 今年度は、貝試料中の高解像度U/Ca測定および放射性炭素(14C)測定を行い、貝試料中のウラン濃度分布および14C濃度分布を定量評価した。分析には、高解像度で貝殻試料を分析可能な東京大学大気海洋研究所高解像度環境解析研究センターのLA-ICP-MSおよび加速器質量分析装置(AMS)を用いた。その結果、現生の貝殻試料に含まれるウランの含有量が数十ppb程度であり、また貝殻試料中に均一にウランが分布していないことが明らかになった。さらに、現生と化石の貝殻試料を比較すると化石試料の方がウラン濃度が高くなっている傾向があり、このことから貝殻試料は死後、ウラン系列の閉鎖系が成立していない可能性が示唆された。一方、貝殻中の14C濃度は海水中の14Cを反映しており、高時間分解能で分析することにより、海水中14C濃度復元に利用可能であることが考えられる。この研究成果は2021年11月に開催された15th International Conference on Accelerator Mass Spectrometryにてポスター発表し、現在、国際誌への投稿準備中である。 さらに、2021年度は学術船航海に参加し、本研究の考察に必須となるウラン濃度測定用の海水試料を沖縄海域、奄美海域、太平洋沿岸部にて採取することができた。今後、この試料を用いて貝試料分析と海水試料の比較分析を行い、貝試料を用いたU/Th年代測定の可能性について定量評価を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍のため、年度前半から分析を行うことが叶わず、当初の研究計画より遅れての進行になっている。一方、分析試料の収集は順調に行うことができ、2021年度は学術船航海に参加し、本研究の考察に必須となるウラン濃度測定用の海水試料を沖縄海域、奄美海域、太平洋沿岸部にて採取することができた。今後、これらの試料を用いて貝試料分析と海水試料の比較分析を行うための実験準備を進めているところである。この分析により、貝試料を用いたU/Th年代測定の可能性について定量評価が可能になると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
貝試料を用いて、ウラン濃度が比較的高かった部位を用い、U/Th年代測定を行う。U/Th年代測定結果と放射性炭素年代測定結果を比較し、年代差について考察を行う。また、2021年度に採取した海水試料を用いて、海水中のウラン濃度を測定し、貝試料の濃度と比較することで、貝試料へのウラン取り込みプロセスについての考察を行う。研究成果を学会で発表し、国際誌へ論文発表を行う。
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