2022 Fiscal Year Annual Research Report
高精度ウラン・トリウム同位体分析による貝を用いたウラン系列年代測定可能性再評価
Project/Area Number |
19K14805
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平林 頌子 東京大学, 大気海洋研究所, 講師 (40835641)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | U/Th年代測定 / 貝試料 / 放射性炭素年代測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般に、二枚貝や巻貝などの軟体動物殻はU/Th年代測定の試料として不適格とされてきた。これは、軟体動物殻がウランに関する閉鎖系を保持しないことが原因と言われているが、近年の研究により、種によっては貝殻試料のU/Th年代測定が可能であることが示唆された。しかし、日本周辺に生息する貝種での検証は行われていなかった。 本研究では、沖縄県久米島および千葉県勝浦から採取されたTurbo属の蓋のU/Ca, Mg/Ca, Sr/Ca比測定および放射性炭素(14C)濃度測定を行い、日本周辺に生息する貝試料を用いたウラン系列年代測定の可能性の再評価研究を実施した。その結果、現生・化石の巻貝の蓋には、ウランが均一に分布していないことが明らかになった。ただし、そのウラン濃度分布は現生と化石とで異なっており、現生試料の場合は幼生期に形成されたと考えられる箇所のみウラン濃度が高くなっている一方で、化石試料の場合は着底後、稚貝の時期に形成されたと考えられる箇所のウラン濃度が高い傾向があった。このことから巻貝の蓋試料は死後、ウラン系列の閉鎖系が成立しておらず、死後のウランの外部からの取り込みおよび溶脱の両方が起こっている可能性が示唆された。さらに、化石のTurbo属試料(700-900 cal year BP)を用いてU/Th年代測定を実施した場合、ウラン濃度が最大値となっている箇所を年代測定に使用した場合と最小値となっている箇所を使用した場合とで、得られる年代値が本来の年代から600-800年もずれる可能性があることが判明した。これは完新世の試料であれば貝試料もU/Th年代測定に使用できる可能性がある、といった先行研究とは異なる結果であった。 一方、巻貝の蓋試料中14C濃度は海水中の14C濃度を反映しており、海水中14C濃度復元に利用可能であることが考えられる。
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Research Products
(2 results)