2020 Fiscal Year Research-status Report
変成岩ダイヤモンドの生成環境から探る地球表層から深部への新たな窒素循環
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19K14808
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
篠崎 彩子 北海道大学, 理学研究院, 助教 (80570506)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 沈み込み帯 / 窒素 / 変成岩ダイヤモンド / 堆積物有機物 / 高温高圧実験 / ダイヤモンドアンビルセル |
Outline of Annual Research Achievements |
窒素は大気の主要な組成であり、地球表層から地球内部のマントル、コアに至るまで多様な環境に存在し、その存在状態も多彩である。地球の進化に大きな影響を与える重要な物質であるにも関わらず、全地球規模での窒素の循環は未解明の点が多く残されている。沈み込むスラブは、地球表層から地球深部へと物質が供給される唯一の場であり、物質循環にとって重要な領域である。本研究では、沈み込むスラブにおける窒素の循環を明らかにすることを目的として、スラブの環境を模擬した高温高圧実験を行う。特にスラブにおける窒素の重要なリザーバーであり、地球表層物質に起源をもつ可能性が指摘される変成岩ダイヤモンドの生成メカニズムの解明を目指す。変成岩ダイヤモンドの窒素の供給源の候補として、地球表層の海洋底における重要な窒素のリザーバーである堆積物有機物に着目し、スラブの環境下での化学反応の詳細とそれに伴う窒素含有量、存在状態の変化を明らかにする。本研究では、主に外熱式ダイヤモンドアンビルセル高温高圧実験を行い、沈み込むスラブにおける堆積物有機物を構成するいくつかの代表的な有機物を対象として、化学反応の温度圧力条件と反応生成物を定性的に評価する。さらに、外熱式ピストンシリンダーを用いた化学反応生成物の詳細な定量的解析から、堆積物有機物の化学組成や分子構造に温度、圧力が与える影響を評価する。また、外熱式やレーザー加熱式のダイヤモンドアンビルセル等を用いた高温高圧実験を通じてC-O-H-N流体からのダイヤモンドを含む炭素相の生成条件と、窒素の含有量の変化を明らかにすることで、変成岩ダイヤモンドの特徴である高い窒素含有量をもたらす要因を解明し、変成岩ダイヤモンドの生成環境を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度上半期に外部共同利用施設での実験ができなかったため、計画よりやや遅れが生じている。一部の研究は学内での実験で進められるよう、当初から研究計画を修正した。計画2年目である本年度は、昨年度導入した外熱式ダイヤモンドアンビルセルを用いて窒素を含む有機化合物、C-O-H-N流体の高温高圧その場観察を行い、~5 GPa, 300℃程度での化学反応を調べた。さらに、より高温での実験を行うために、外熱式ダイヤモンドアンビルセルの改良を進めている。また、堆積物有機物の重要な構成成分である炭化水素の化学反応に関して、外熱式ピストンシリンダーを用いた高温高圧実験を行い、回収試料の分析から、炭素相が生成する温度圧力条件をより詳細に調べた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き外熱式ダイヤモンドアンビルセルを用いた高温高圧実験を進め、スラブの温度圧力条件における有機物の化学反応を調べる計画である。特に、外熱式ダイヤモンドアンビルセルのヒーター等の改良を進め、より高温での化学反応を調べる計画である。状況によっては、外部研究施設でのレーザー加熱装置を用いた実験を進めたいと考えている。外熱式ピストンシリンダーを用いた高温高圧実験では、引き続き窒素を含む有機物の化学反応の詳細を、反応速度も含めて調べて有機物からの炭素相の生成に対する窒素の影響を調べていく計画である。実験成果を基に、沈み込むスラブにおける堆積物有機物を介した窒素の挙動と変成岩ダイヤモンドとの関連性を考察していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で外部共同利用施設での実験が困難になり、一部研究計画を修正したため、次年度使用額が生じた。次年度は学内での実験が可能なように研究計画を修正し、また、状況を見極めながらで外部共同利用施設の利用を検討していく。
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