2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K14812
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| Research Institution | Kyoto University |
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Principal Investigator |
吉光 奈奈 京都大学, 工学研究科, 助教 (20724735)
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2019-04-01 – 2022-03-31
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| Keywords | 応力降下量 / ベイズ統計 / MCMC |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は，小規模な地震の震源特性を調べ，地殻内のモニタリングや地震発生物理の理解につなげることにある．断層帯で発生する地震の応力降下量（地震が解放した応力の大きさ）は，地殻の応力状態を反映するのではないかと期待されてきたが，推定誤差の大きさなどから，これまではっきりとした断層や大地震との関係性はわかっていなかった．本研究では，これまで用いられてきたグリッドサーチによる推定手法に代わり，統計学的手法を導入で，解析クオリティの評価をおこない，結果の精度を高めることを目指す．最終的には，応力降下量の時空間変化の有無，大きな地震や断層との時空間関係を調べ，媒質変化のモニタリングへつなげることを目指す．2020年度は統計学的なアプローチにより応力降下量の推定手法を改良し，その性能を評価した．
地震の震源特性は観測波形スペクトルと理論スペクトルとの比較を通して，地震パラメタという値に焼き直される．応力降下量はこの地震パラメタの組み合わせによって計算される．2020年度は，前年度に開発したマルコフ連鎖モンテカルロ法を応用した応力降下量推定手法を改良し，良い安定的な解析を目指した．この手法では尤度の計算過程で確率密度関数が必要となるが，比の形式のデータに適したF分布を採用することによって，解析の安定性が高まった．
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は統計学的解析手法の導入，実データへの適用，解釈の順に進む予定となっており，研究はやや遅れながら進んでいる．本研究では大規模データの取り扱いが必要であるが，コロナウィルスによる自宅勤務の影響で，データへのアクセスや大容量データの解析ができない時期があった．
2020年度は統計学的手法を用いた応力降下量の推定手法の改良と，岩石実験データの基礎解析に取り組んだ．応力降下量は，震源位置が近接した大小ペアの地震のスペクトル比を用いて解析する．解析のためにはまず岩石実験データのイベントカタログ作成の必要があり，現在波形記録の自動読み取りを実施中である．
地震波形の変位スペクトル形状は地震規模と震源サイズやすべり速度を反映しており，地震モーメント（Mo），コーナー周波数（fc）と呼ばれる地震パラメタに変換される．スペクトル波形を理論震源モデルと比較し，地震モーメント比，大小地震それぞれのコーナー周波数の３つの未知変数を推定し，それらを既存の関係式に代入して応力降下量を推定する．2019年度の研究ではマルコフ連鎖モンテカルロ法を応用した統計学的手法を導入することにより，応力降下量の絶対値を推定するだけでなく，推定値のトレードオフや，計算の安定性を評価することが可能になった．この手法では尤度の計算が必要になるが，既往の研究では天下り式に正規分布が用いられてきた．本研究ではスペクトル比を解析することから，比の形式に適した確率密度関数としてF分布を採用し，正規分布を利用した際との比較を行った．100以上のサンプルデータを生成して推定をおこなったところ，F分布を採用したときの方が解析結果は安定性を見せた．
前年度の研究成果は論文にまとめて査読付き国際誌に投稿中である．査読の結果を受けて，手法の改良と論文の修正に取り組んでいる．
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| Strategy for Future Research Activity |
2021年度はまず，2020年度中に完了しなかった波形記録中のイベントの同定，震源決定等を実施してイベントカタログの作成を完了する．今年度もコロナウィルスの影響がつづくと予想されることから，年度前半は自宅からも解析しやすい環境をつくることを意識しながら研究をおこなう．年度後半は2020年度までに作成した解析アルゴリズムを用いて，岩石破壊試験中に収録された波形記録の解析を実施する．
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| Causes of Carryover |
コロナウィルスの影響などにより出張が予定より減ったことと，研究の進捗の遅れにより予定していた論文投稿が遅れたため．
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