2019 Fiscal Year Research-status Report
空振観測によるマグマ噴火と水蒸気噴火の分類手法の新提案
Project/Area Number |
19K14819
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 大志 京都大学, 防災研究所, 助教 (60804896)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 火山噴火 / 噴煙 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、火山噴火に伴う噴煙の熱力学的検討に資する解析として、連続可視画像観測で記録されている噴煙運動を評価し、同時に観測される空気振動(空振)や地盤変動、地震波などの波形記録との対応を調べた。噴煙運動の代表的物理量として噴煙最頂部の鉛直上昇速度に着目し、桜島火山でのマグマ噴火(ブルカノ式噴火)の可視画像記録から、見かけ上の鉛直速度の時間変化を推定した。解析では、火口縁出現直後の噴煙は急減速しながら上昇し、その後は一定の速度で上昇するという、先行研究や他の火山における事例と合致する特徴が確認された。空振記録解析で推定される噴煙体積の時間変化は、上記の噴煙運動のうち噴煙が急減速しながら上昇する初期段階と対応が良い。一方で、地盤変動や地震波振幅は、急減速した後の等速上昇部分も含めて噴煙運動と良い対応を示す。こうした知見は、噴煙の物理過程と観測量の関係を理解する上で重要な知見である。今後は速度のみでなく、見かけ体積の推定や観測量励起源の定量化によって、観測記録が反映する噴煙の物理過程を明らかにできることが期待される。 口永良部島では、水蒸気噴火と思われる噴火現象が当該年度にも複数回発生している。こうしたイベントに伴う空振、地震記録は、代表者の所属する京都大学防災研究所火山活動研究センターによって欠測なく収録されており、本課題の遂行に重要なデータの蓄積が進んでいる。 また、野外観測用のサーモグラフィを調達し、野外連続観測に向けての課題などの検討を実施した。上記の観測量の関する知見に対して熱的な情報が加わることで、マグマ噴火と水蒸気噴火の区別に有効な知見が得られる事が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
観測実施環境や火山活動を反映して、桜島火山を対象としたマグマ噴火(ブルカノ式噴火)についての研究が進んでいる。空振や地盤変動、地震動といった観測量については、桜島で発生するイベントについて良好な観測記録が得られている。研究題目に掲げた空気振動のみではなく、地盤変動や地震波の観測記録からも噴煙の物理過程を反映すると思われる特徴が見出されており、こうした観測記録の定量化によって、観測量と噴煙物理過程の関係の理解への道筋が立っている。 水蒸気噴火については、口永良部島で発生している噴火現象に伴う空振、地震記録が得られている。これら観測記録は、マグマ噴火で得られた知見を応用し、水蒸気噴火とマグマ噴火の違いを明らかにする際に重要な観測データであることから、本格的な解析に備えて記録の特徴の整理を行なっている段階である。 野外での連続熱観測についてはやや準備が遅れており、長時間安定運用についてはさらなる検討が必要である。一方で、代表者の所属する火山活動研究センターには桜島火山に関する連続熱観測記録が保存されており、こうした過去イベントの解析によって熱力学的特徴を推定することも検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、可視画像記録で捉えられているマグマ噴火(ブルカノ式噴火)の噴煙運動を定量化し、空振記録上との特徴の関係を明らかにする。また地盤変動や地震などの空振以外での複数観測量でのアプローチも進める。熱力学的情報として、サーモグラフィにおける観測を桜島火山で開始し、噴煙の熱的性質が捉えられるのかどうかを評価し、上記の観測量に基づく噴煙の評価に組み込む。火山活動研究センターで過去に記録された噴煙のサーモグラフィ記録についても参照する。 水蒸気噴火については、上記のブルカノ式噴火を対象とした観測記録の検討に対して、新たに発生している水蒸気噴火に伴う観測記録がどのような特徴を有するのかを整理する。また、口永良部島での連続的なサーモグラフィでの観測の準備を進める。
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