2021 Fiscal Year Annual Research Report
Geochemical analysis of a microbial mat in the Archean
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19K14829
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
斎藤 誠史 金沢大学, 地球社会基盤学系, 博士研究員 (80637588)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 太古代前期 / 堆積岩 / 微生物マット / 四種硫黄同位体比 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、初期地球における生命の活動の痕跡を記録していることが期待される太古代前期(約35億年前)の堆積岩を対象とした地球化学分析を行ってきた。具体的には、南アフリカ共和国東部に産する微生物マット様の構造を含む太古代前期の堆積岩の四種硫黄同位体比を分析してきた。特に分析した硫化鉱物に太古代の地質記録に特有の硫黄の質量非依存性同位体分別が記録されていることを明らかにしてきた。本課題の最終年度では、本研究でこれまでに得られた硫黄同位体比の記録と、同地域および他地域における同年代の地質記録との対比を行い、約35億年前の地球規模の硫黄循環の制約を試みた。この結果、本研究で分析した岩石に記録された硫黄同位体シグナルは、この岩石よりも下位の緑色岩に含まれる硫酸塩鉱物および硫化鉱物のそれとは、(いずれも硫黄の質量非依存性同位体分別を記録するものの)正負の符号が真逆であることが明らかになった。その一方で、これらの正負の符号の同位体シグナルが共存する南アフリカの地質記録は、同時代の西オーストラリアの地質記録と調和的であることが明らかになった。太古代の地質記録中の硫黄の質量非依存性同位体分別は還元的な大気下における硫黄化学種の光化学反応によって生成したと推定されており、本研究で分析した岩石にも還元的な大気由来の硫黄の寄与があった可能性が示唆される。さらに、当時地理的に隔たっていた可能性がある南アフリカと西オーストラリアの地質記録において共通する四種硫黄同位体シグナルが見出されたことは、これが太古代前期における地球規模の硫黄循環を反映する可能性を示唆する。
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