2019 Fiscal Year Research-status Report
最適構造設計と革新的欠陥修復手法による平均公称強度10GPa超のCNTの創製
Project/Area Number |
19K14837
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
白須 圭一 東北大学, 工学研究科, 准教授 (20757679)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | カーボンナノチューブ / 熱処理 / 欠陥修復 / 公称強度 / 分子動力学 / 層間架橋結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究1:分子動力学シミュレーションにより単層および層間架橋結合を導入した2層カーボンナノチューブ(CNT)の引張試験計算を実施した.層間架橋結合を少数導入するとCNTの実強度および公称強度は低下したものの,層間架橋結合数が増加すると2層全てで破断し公称強度が向上することが認められ,同径で無欠陥の単層CNTと同程度の公称強度が得られた.したがって,現時点では,2層CNTの公称強度の最大値は同径の単層CNTと同程度であることを示唆する結果が得られている.
研究2,3:本研究では,エチレンとアルゴンの混合雰囲気下で熱処理を行い炭素原子をCNTに供給することによってCNTの欠陥修復を図った.次に,上記の熱処理を施したCNTに対して2200℃での高温熱処理を行った.得られた試料おいてTEM観察およびラマン分光分析による構造・結晶性の評価を行い,SEM内引張試験により力学特性を評価した.未処理のCNTに比べてエチレン雰囲気下での熱処理および2200℃での高温熱処理を行ったCNTでは公称強度は同程度あるいはわずかな向上が認められた.一方,結晶性およびヤング率は大きく向上した.したがって,エチレンガスを用いた熱処理による炭素原子供給と高温熱処理による炭素原子再配列を組み合わせたCNTの構造制御手法は,機械的特性の向上に効果がある可能性を示した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究実施計画に対して,研究実績の概要に示す成果を挙げることができており,おおむね順調に進展している.分子動力学計算においては,期間前半で計算条件を決定するまでに時間を要したため,本年度では2層CNTまでの計算に留まった.次年度では3層以上のCNTに対して層間架橋結合数と力学特性との関係を評価する予定である.
|
Strategy for Future Research Activity |
研究実績概要にも記載したように,熱処理によりCNTの構造制御とそれに起因してヤング率の向上はできているものの依然公称強度の大幅な向上には至っていない.CNTの力学特性向上のためには,熱処理時のエチレン分圧や温度条件の詳細な検討を継続する必要があると考えている.CNTの引張試験は統計的なデータを取得するために十分な試験数と作業時間を要するため,次年度も重点的に実施する予定である. また,分子動力学計算においては,層数の増大に伴い原子数が増えるために,計算コストが大きくなるために計画的に研究を遂行する必要があると考えている.
|
Causes of Carryover |
当初CNTの合成を行う予定で出張費および材料費を計上していたが,無償提供の手配ができたために,計算機の導入コストへ割り当てることを検討した.本年度は既に所有していた計算機で研究を遂行できたために全額を使用せず,次年度の予算と合わせて高性能計算機の導入を進める予定としている.
|
Research Products
(6 results)