2019 Fiscal Year Research-status Report
ラム波の非線形周波数ミキシングを用いた平板屈曲部の高感度健全性評価
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19K14841
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
石井 陽介 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70781706)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ラム波 / 非線形周波数ミキシング / 材料非線形性 / モード分解法 / 動的有限要素法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,ラム波の非線形周波数ミキシングを用いた平板屈曲部の高感度非破壊評価法の確立を目的としている.ラム波は平板内を伝搬する固有モードであるため,損傷やきずのない屈曲部の場合でもラム波の散乱が起こると予想される.そのため,屈曲部における非線形周波数ミキシングを解明するためには,健全屈曲部でのラム波反射・透過挙動の正しい理解が必要不可欠である. そこで本年度は,モード分解法を用いた理論解析,動的有限要素法を用いた数値シミュレーションおよび実験により,平板屈曲部でのラム波反射・透過挙動の検討を行った. 理論解析では,平板部-屈曲部-平板部からなる線形弾性板内において,単一ラム波モードを屈曲部に入射したときに反射波および透過波として発生するラム波のモード振幅をモード分解法により求めた.その結果,入射波モードに加えてそれとは異なるラム波モードが反射波および透過波として発生し,そのモード振幅が周波数,屈曲部の曲げ角度,曲げ半径に顕著に依存することが明らかとなった.さらに,入射波と反射・透過波の間には相反定理(Aモードを入射したときに発生するBモードのエネルギー割合は,Bモードを入射した時に発生するAモードのエネルギー割合に等しい)が成り立つこともわかった.これらと同様の結果が,二次元平面ひずみ動的有限要素法による数値シミュレーションにおいても確認された. 次に,屈曲部を有するアルミニウム合金板に対して,斜角ウェッジにより単一ラム波モードを励起し,屈曲部において反射・透過したラム波をレーザドップラ振動計により測定した.その結果,理論や数値解析と整合する結果(入射波とは異なるモードの発生や反射率・透過率の周波数依存性)が見られた.また,A0モード入射時のS0モード反射率とS0モード入射時のA0モード反射率がほぼ同程度となり,理論的に示した相反定理の妥当性を示唆する結果が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は理論解析,数値解析,実験を通して平板屈曲部におけるラム波反射および透過挙動を明らかにする計画であった.理論解析では,モード分解法の定式化を行い,任意のラム波モードを屈曲部に入射した際の反射波および透過波として発生するモード振幅を計算できるようにした.また,入射波モードと反射波・透過波モードの間に成り立つ相反定理を数値的にではなく,解析的に示すこともできた.加えて,数値解析による理論解析の妥当性検証もできた.これらの点は当初の計画通り進展したと言える. 実験に関しては,入射波と反射波モードの間に相反定理がほぼ成り立つことが示せた.一方で透過波に関してはA0モード入射時のS0モード透過率とS0モード入射時のA0モード透過率に差異が見られた.これは,理論や数値解析は二次元平面ひずみ状態を仮定しているのに対して,実際の実験では有限径の探触子を用いてラム波を励起しており,三次元的拡散の影響が原因の一つではないかと考えている.この点の改善は次年度の課題である. 以上のように,次年度への課題が残ってはいるものの,当初計画していた研究がおおむね順調に進展していると評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は,本年度の実験で課題となった入射波と透過波モードの間に相反定理が成り立たなかった原因を再検討する.ラム波は伝搬距離に伴う拡散減衰がモードごとに異なるため,レーザドップラ振動計による多点観測を実施し,拡散の影響を補正するような係数を算出した上で透過率を再計算することで,問題解決を図る予定である. そして,本年度に行った理論解析に摂動法を組み込むことで,材料非線形性(応力-ひずみ関係の非線形性)を有する板中の波動伝搬を解析できるように拡張し,屈曲部におけるラム波の非線形周波数ミキシングの解明を目指す.そして,屈曲部の材料非線形性を高感度評価可能なラム波モードの組み合わせを検討し,動的有限要素シミュレーションによる妥当性検証を行う予定である.
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Research Products
(2 results)