2022 Fiscal Year Annual Research Report
疲労損傷のマルチスケール的観察が結びつける転位-塑性変形-き裂関係
Project/Area Number |
19K14853
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
吉中 奎貴 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主任研究員 (00825341)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 疲労 / き裂 / 塑性変形 / 微視組織 / 合金開発 / 鋼 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究事業においては積層欠陥エネルギー(SFE)に応じて種々の塑性変形メカニズムを示す高Mn鋼について、その疲労特性を転位からき裂にわたる関係に着目して調査した。 SFEが特に低い材料においてはγオーステナイトからεマルテンサイトへの変態が変形メカニズムとしてあらわれ、εの変形異方性に起因した極めて結晶学的な疲労破面が得られた。疲労破面の3次元形状を測定したところ、各相のすべり面同士がなす角度あるいは変態時の方位関係により特徴づけることができた。 一方、試験温度を変化させることでSFEあるいはGibbs自由エネルギー差(ΔG)を変化させて疲労試験を行ったところ、最も優れた疲労特性を得られる条件として、「変形メカニズムとしてγ→ε→γ双方向変態が生じること(B-TRIPが生じること)」を示した。この条件はΔG=0として記述できる。一方、き裂周囲(=疲労破面直下)における変形組織の解析を行ったところ、き裂先端のひずみ場によりα'マルテンサイトの生成が促進されることが明らかとなった。さらに、疲労寿命は破断後のα’量に反比例することを示し、B-TRIPを最大限活用し疲労耐久性を高めるための条件として「双方向変態の妨げとなるα'の発生を抑制すること」が必要であることを示した。 本年度はα'の抑制の観点から新合金を開発しその疲労特性と変形組織を調査した。その結果、新合金は従来合金に比べて2倍の疲労寿命を達成した。変形組織を調査した結果、新合金ではき裂周り(疲労破面直下)においてもα'量の生成量はきわめてわずかであった。これらの結果から上述した耐疲労鋼材の設計指針の正しさを実証した。
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