2019 Fiscal Year Research-status Report
成形接合メカニズム解明のための状態制御金型による樹脂特性コントロール
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19K14859
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 文信 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (10739311)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 金属・樹脂直接接合 / 射出成形 / 型温動的制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
表面に微細構造が形成された金属部材がセットされた金型に,樹脂を射出成形することで,金属部材と成形樹脂が直接接合される.射出成形による流動中の樹脂状態が接合の形成に大きな影響を与えると考えられる.本研究では,接合の発生現象を解明するために樹脂状態を複雑に制御することを検討する.樹脂状態を変化させる手法として,射出成形中の金型状態を高度に制御できる金型の開発を行う. 2019年度は,高度な状態制御が可能な金型の開発を行い,その基本的な性能の評価を行った.金型で制御する状態としては,温度の空間分布の時間変化(動的空間分布)と流動形状を採り上げた.温度の動的空間分布を制御するため,冷却水を流すチャンネルおよび型内部を局所的の加熱できる小型のヒータを複数配置し,それぞれを独立して制御する方策をとった. 開発した金型の基本性能の評価として,金型全体の温度を動的に変化させたときの接合特性の変化を調査した.射出成形では,溶融した樹脂を金型内に流し込み(射出し),最後に圧をかけることで完全に充填させ,金型内で樹脂を冷却・固化させる.射出開始から完全に充填されるまでの間だけ一時的に型温を高くし,冷却工程では通常の型温に戻すというような制御を行った.そして,一時的に高くした温度の値が接合強度に与える影響を調べた.その結果,型温を高くするほど接合強度が高くなり,従来研究で最適化した成形条件において得られる接合強度の最高値よりも高い接合強度を得ることができた.また,最適ではない成形条件(高い接合強度が得られない条件)であっても,高い接合強度が得られた.このことから,動的制御によってプロセスの効率を高くできることも確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,状態制御可能な金型の開発が完了し,その効果の検証が進められているため,順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,開発した金型の型温動的制御の影響の調査を引き続き進めるとともに,まだ実施できていない金型温度分布制御の効果検証を進める.また,温度の空間分布を時間変化させたとき(動的分布制御)の影響も調査する. さらに,温度以外の金型状態として,流動形状を変えることを検討する.流動形状を変化させる方法としては,金型を構成する金属ブロックを組み替えるという方法を用いる.異なる流動形状での型温動的分布制御の影響の調査を進める. 様々な金型状態や成形条件に加えて,多様な金属の表面処理手法を用い,接合の評価に関しても様々な方法を用いる.これらの多角的な調査を通して,溶融樹脂流動中に接合が生じるメカニズムの解明を進める.
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Causes of Carryover |
金型の作製にあたり,企業から多くの協力が得られたため,作製費を当初の予定から削減できた.削減できた予算を,実験用サンプル作製の材料費や研究成果の公表にかかる費用にあてるよう計画を変更した.材料費や公表費は各年度継続して必要になるが,実験量が増え,成果が増えてくると思われる次年度で各費用の使用を多くするため,本年度の予算の一部を次年度使用額として計上した.上記の通り,次年度使用額はサンプル作製の材料費や成果の公表費とする使用計画とする.
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