2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of novel cutting oil for hard-to-cut materials using ionic liquid
Project/Area Number |
19K14862
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
川田 将平 東京理科大学, 工学部機械工学科, 助教 (60822517)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イオン液体 / 切削加工 / トライボロジー / 潤滑 / 添加剤 / 化学分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、次世代製造業の牽引が期待される航空・宇宙産業で用いられる、耐熱超合金やチタン合金などの難削材料の除去加工における問題解決を目指したものである。難削材量においては、大きな切削抵抗、工具摩耗、すくい面の高温化および仕上げ面不良などの問題が起こる。そこで、切削加工には切削油が使用されているが、難削材料の切削加工においては激しい温度上昇により切削油の分解や蒸発によって潤滑不良が生じ、工具摩耗や加工不良の原因となることがある。そこで研究実施者は、これを解決する一つの方策として、高温環境においても十分な潤滑性を発揮するイオン液体の適用を考えた。本研究の目的は、難削材料の切削加工性を格段に向上させる切削油の開発を目指し、難削材料と工具摩擦面におけるイオン液体の潤滑メカニズムを解明することである。 2019年度(令和元年度)においては、イオン液体の化学構造と難削材料に対する潤滑性を評価した。また、摩擦試験後には表面分析を用いることで、どのような反応膜・吸着膜が潤滑性に優れているかを同定した。その結果、ハロゲン系イオン液体、硫黄・リン系イオン液体、シアノ系イオン液体すべて良好な潤滑性を示した。 また、実際の切削油は、水により10%以下に希釈するため、水道水にイオン液体を添加した場合の試験も行った。その結果、フッ素系イオン液体以外の潤滑性が悪化することが確認された。これは、水がイオン液体の摩擦面への反応・吸着を阻害するためと考えられる。この結果においては、今後、水晶振動子マイクロバランス法などを用いて、吸着量を定量化する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2019年度(令和元年度)においては、イオン液体の化学構造と難削材料に対する潤滑性を評価し、摩擦試験後に表面分析を用いることで、どのような反応膜・吸着膜が潤滑性に優れているかを同定することが目標であった。その結果、ハロゲン系イオン液体、硫黄・リン系イオン液体、シアノ系イオン液体すべて良好な潤滑性を示したことがわかった。また、ハロゲン系イオン液体と硫黄・リン系イオン液体においては、ハロゲン金属や硫化金属、リン酸金属が形成されていることが化学分析により示された。一方で、シアノ系イオン液体においては、イオン液体のアニオン由来の吸着膜が形成されることが示された。 以上のように、当初の計画通り結果が示された。 それに加えて、2020年度(令和2年度)の研究実施予定であったイオン液体の添加剤としての潤滑性評価も進んでおり、当初の計画以上の進展が見られた。その結果として、フッ素系イオン液体以外の潤滑性が悪化することが確認された。これは、水がイオン液体の摩擦面への反応・吸着を阻害するためと考えられる。この結果においては、今後、水晶振動子マイクロバランス法などを用いて、吸着量を定量化する予定である。 また、研究成果の発信として、論文投稿や学会における発表なども積極的に行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
イオン液体の添加剤としての評価を行うため、水晶振動子マイクロバランス法などを用いて、摩擦面への吸着量を定量化する予定である。 また、加工面は非常に高温に晒される。したがって、高温における切削油の性能を担保するには、高温雰囲気下での潤滑性評価が必要となる。イオン液体は、優れた熱安定性を示すため、加工面においても液体として存在することができると考えられ、高温雰囲気下での潤滑メカニズムの検証を行う。 上記に加え、2021年度(令和3年度)に実施する予定であった内容も早めに着手する予定である。内容としては、旋盤などの工作機械をモデルとした実験装置を製作し、切削加工性の評価および切削加工後の仕上げ面の粗さなどを観察することにより、摩擦試験による評価手法の妥当性の検証を行う。 また、切削加工時、化学活性が非常に高い新生面が現れることが知られている。研究実施者は、切削加工機に四重極質量分析計を組み込むことで、イオン液体の新生面での分解過程を測定し、加工面に生成された物質を化学分析で明らかにする予定である。 以上の結果を積極的に論文や学会などで発信する予定である。
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Causes of Carryover |
物品費において、購入予定であったイオン液体の一部製造中止により、繰越金が生じた。 購入予定であったイオン液体においては、他社への権利譲渡が行われており、2020年度においては、購入が可能であることから、翌年度分として請求を行う。
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