2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K14868
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Industrial Technology Research Institute |
Principal Investigator |
大久保 智 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 事業化支援本部技術開発支援部3Dものづくりセクター, 研究員 (30757349)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フラッシュ焼結 / Additive Manufacturing |
Outline of Annual Research Achievements |
開発する局所フラッシュ焼結装置の機構を模擬するため,針状電極とリング状電極を3D-CADにより作成し,CAEによる電界分布解析を行った.これにより,針状電極は想定するサイズ・形状の範囲内で,電極先端から1mmの範囲内で電界強度が1000V/cm以上に到達することがわかった.したがって,局所フラッシュ焼結実験において十分に高い電界強度を得るには,電極形状は重要な因子ではないことがわかった.ただし,先端形状が鋭利になると,電極先端に電流が集中し,ジュール熱による過熱で電極が溶融する恐れがある.そのため,局所フラッシュ焼結実験では曲率半径の異なる先端形状の針状電極を用いた. 局所フラッシュ焼結実験をシミュレーションするため,電気-熱の連成解析を行った.焼結ターゲットのセラミックスはイットリア安定化ジルコニア(YSZ)とし,積層厚さを0.01mmの直方体としてモデル化した.雰囲気温度は500℃,800℃,1000℃とし,通電によるジュール熱の発熱現象を解析した.その結果,500℃では十分な電流が流れず,温度の上昇はほとんど見られなかったが,800℃,1000℃ではジュール熱による十分な加熱が見られた. シミュレーション結果から,800ー1000℃の温度範囲で局所フラッシュ焼結実験を行った.YSZは粉体とし,圧縮成形をせずに粉末層として積層させた.積層厚さは,10mm,5mm,3mm,1mmと厚さを減らしていきながら実験を行った.積層厚さが10ー3mmでは局所フラッシュ焼結ができたが,1mmでは放電が優先して起きるため焼結ができなかった.薄い積層厚さでフラッシュ焼結を行うには,材料特性として導電性を上げる必要があると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
開発している局所フラッシュ焼結装置の機構を3D-CADでモデリングし,CAEによりその電界分布解析を行った.その結果,使用予定の針状電極で電界強度分布が得られた.一方,電界分布の測定は未着手のままであるが,最終的な目標達成に大きな問題はなく,今後着手する予定である. 局所フラッシュ焼結実験では,積層厚さ10-3mmで温度範囲800-1000℃におけるフラッシュ焼結開始時(電流が流れ始める時)の電界強度の臨界値が得られた.一方,積層厚さが1mmの場合でも同様の実験を行ったが,放電が優先的に起こってしまい,焼結体を得ることができなかった.今後,積層厚さを薄くするように材料組成や材料特性を改善して実験を行っていく予定である. また,焼結時の温度測定を赤外線カメラにより行う予定を立てていたが,用意した電気炉では観察用の窓を設けることで目標温度まで到達しない恐れがあった.そのため,R熱電対による測定を試みた.ただし,電圧印可による熱電対への漏電の危険を回避するため,局所フラッシュ焼結部分からある程度距離を取って熱電対を設置した.この条件で測定を行ったところ,焼結時の温度変化が十分に捉えることができなかった.今後,電気炉の昇温効率を改善して,赤外線カメラで温度測定ができるように進めていく.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で積層厚さが10ー3mmでの局所フラッシュ焼結を可能としたが,Additive Manufacturingではより薄い積層厚さが求められる.今後は積層厚さを1mm以下で局所フラッシュ焼結が可能となるように,材料組成と材料特性(とくに,粒度分布)を変更して実験を行う.また,これまでは針電極を動かさない静的な状態で局所フラッシュ焼結実験を行ってきた.今後は針電極を一定速度で動かしたときの焼結実験を行い,走査速度と焼結幅,深さの関係を明らかにする.さらに,電気炉を改造して局所フラッシュ焼結中の温度を赤外線カメラで測定し,焼結中の温度変化を明らかにする.
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Causes of Carryover |
当初予定していたフラッシュ焼結用の交流電源が,同等スペックのものでより安価なものを購入することができた.次年度では当初予定にはなかった電気炉の改造費用と,材料特性の改善費用が発生するため,この不足分に今年度生じた差額金を充てる.
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