2019 Fiscal Year Research-status Report
Structural Optimization Method for Thermal Diodicity Material
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19K14870
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
古田 幸三 京都大学, 工学研究科, 特定研究員 (20833031)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 構造最適化 / レベルセット法 / ボルツマン輸送方程式 / 熱伝導 / ダイオード特製 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱のダイオード特性をもった材料,いわゆる熱整流器の研究開発は,2000年代後半から理論的検討から始まり現在に至るまで,実験的検討を含め幾つかの報告がなされている.その中での課題として,理論値と実験で開発された材料での性能との間に大きな乖離があることがあげられる.熱整流器の性能を表す指標として,高温側の物質における熱混濁タンスと低温側の物質における熱コンダクタンスとの比で定義される熱整流係数がある.理論的には,この熱整流係数が10以上のものが存在するのに対して,実験値としては従来1.1を超える程度のものがほとんどであった.そこで,本課題では最適設計法の考え方に基づき,この熱整流性をもったナノ構造設計案の導出を行う.ナノ構造内では,フーリエ則に従うような等方的な熱の伝搬ではなく,弾道的に熱が伝搬する.さらに,材料界面において温度が不連続になるような強い非線形性をもった物理現象となる.本申請課題では,ダイオード特性をもった新熱伝導材料実現のための最適設計手法の構築を行う.本年度は手法構築の第一段階として,その基礎理論となる「ナノ構造における熱伝導問題を対象としたレベルセット法に基づく構造最適設計法」の構築を行ない,非線形性を利用したナノ構造を対象とした熱電素子材料の設計案の導出に成功した.これにより,ナノ構造内の非線形性の強い熱伝導現象を利用した設計手法の構築が可能となることを確認した.今後は,本手法および,流体問題を対象とした最適設計法の分野ですでに提案されているテスラバルブのトポロジー最適化法を組み合わせることで,ダイオード特性をもった革新的熱伝導材料の創成設計法の構築を行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,申請課題の基礎理論となる「ナノ構造における熱伝導問題を対象としたレベルセット法に基づく構造最適設計法」の構築を行なった.本設計手法から,強い非線形性をもったナノ構造内における熱伝導を利用した最適構造が得られることがわかった.次年度以降ではこれまでに得られた知見をもとに,ダイオード特性を達成するような適切な目的汎関数等の最適設計問題の定式化および数値実装を行うことで理論的な構築が可能になると考えている.以上の理由により,計画はおおむね順調に進展していると評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降では,本年度に構築した構造最適設計法を本課題の目的であるダイオード特性をもつナノ構造を対象とした設計問題に拡張する.その際に,流体問題ですでに構築されているテスラバルブを対象としたトポロジー最適化法の考え方を導入する.本手法では,これまでに構築した最適設計法に対して,熱の流れを系内で反転させ二回計算することで,ダイオード特性をもった熱伝導材料の導出を行う.そのため,計算時間が単純に二倍になることが予想される.また,最終年度には三次元問題への拡張を予定しており,計算時間の短縮が必須課題となる.CPU並列化の中でも,OpenMP並列化技術により,すでに並列化を行なっているが,本課題のような単純な繰り返し計算については,計算機を複数台使用するMPI並列化技術が適していることがわかった.これら事前調査により,当初予定していたGPGPU並列化計算による高速化に比べ,本手法に適していること,そして,導入の容易さより,今後は本計算手法の構築を行う予定である.構築した計算環境,技術により,これまでに構築した最適設計法に基づく数値計算を行うことで,熱整流性をもったナノ構造の設計案創出を行う予定である.
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Causes of Carryover |
本年度構築した最適設計法に関する数値計算については,すでに使用している計算機および今年度購入した計算機で行える範囲であった.しかし,次年度以降導入予定のMPI並列化計算ではCPU数の多い計算機の導入及び,既存の計算機を併用し,大規模計算に対応する予定である.また,COVID-19の影響で当初予定していた国内出張および学会参加に伴う学会参加登録費の支払いが延期または中止されたためである.
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Research Products
(2 results)