2020 Fiscal Year Research-status Report
次世代超臨界流体システムに向けた多成分系超臨界流体熱流動の解明
Project/Area Number |
19K14881
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
古澤 卓 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (80637710)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 数値流体力学 / 超臨界流体 / 炭化水素流動 / 多成分 / 化学反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
超臨界二酸化炭素を用いたブレイトンサイクルや超臨界水を用いた微粒子生成技術など,超臨界流体は環境工学から化学工学まで幅広い分野で使用されているものの,超臨界および遷臨界流動はほとんど明らかにされていない.本研究では,特に複数の流体や物質が混在した超臨界流体に関して数値計算手法を確立し,様々な分野で使用される超臨界流体の流動問題を解決することを目的としている.二年目となる本年度はREFPROPおよびPROPATHに定義されている多項式型の状態方程式の熱物性値データベースを直接使用した計算手法を用い,複数成分の熱物性値算出について簡易的な混合モデルおよび混合則を用いた熱物性値算出手法を相互に比較した.また,臨界点近傍の数値不安定性を取り除くためにDouble Flux法を導入した数値解析手法を構築することで,様々な条件下における多成分超臨界流体の流動解析を安定して実施可能にした.これらの手法を用いて超臨界条件下のオクタンおよびドデカンの臨界点近傍流動および熱分解反応を伴う高温流動の数値解析を行い,分解率および加熱管路出口温度を正確に再現できることを示した.また,超臨界水を用いた連続水熱合成反応器内部の混合流動および化学反応の数値解析を実施し,超臨界水と常温溶液の混合によって管路内の反応率がレイノルズ数に依存することを明らかにした.また,二次元翼周りおよび遠心圧縮機内部の液滴を伴う超臨界圧および高圧条件下の二酸化炭素流動の数値解析を実施して,翼近傍の加速領域にて非平衡凝縮が生じることを示すと共に液滴と損失の関係を定量的に評価した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度から継続して,多成分および液滴を含む超臨界圧および高圧条件下の流動解析手法を構築した.Double Flux法を導入することで,超臨界条件下のみならず遷臨界条件下においても安定した数値計算が可能となった.さらに多成分混合条件下の熱物性値算出のために,簡易的な線形補間モデル,混合則を用いた熱物性値算出手法について流動への影響を相互比較することで,超臨界炭化水素流動にあたえる影響を定量的に評価した.これらの手法を用いることでオクタンおよびドデカンの熱分解を伴う超臨界流動において,実用的な格子点数を用いて分解率や温度分布などを評価することが可能になった.加熱管路出口温度および分解率共に実験結果との良い一致を示しており,今後の超臨界炭化水素流動の解明が期待できる結果を得た.また,超臨界水熱合成反応容器内部の超臨界水流動についても化学反応を考慮した数値計算によってレイノルズ数条件による反応率の差異を明らかにし,実験結果との良い一致を示した.微小液滴を伴う超臨界二酸化炭素流動について二次元翼型周りの解析によって高圧条件下の二酸化炭素の非平衡凝縮が翼面圧力分布に与える影響およびエントロピー損失に与える影響を様々な条件下で評価した.これらによって次世代発電技術として使用される超臨界二酸化炭素遠心圧縮機流動の解明が期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度については,三次元流動解析手法として高次精度の数値計算手法を用いた三次元流動解析を実施する予定である.併せて前処理型の数値計算手法において超臨界条件下および常圧条件下の非定常流動の妥当性を検討する.それらを踏まえて特に化学反応器内部の超臨界水および常温溶液の非定常流動を明らかにすることで,乱流条件下の超臨界水混合が化学反応に与える影響を評価する予定である.また,超臨界二酸化炭素を用いた遠心圧縮機内部流動について様々な条件下で数値計算を行うとともに実験結果との比較を行い,超臨界条件下および高圧条件下の非平衡凝縮が遠心圧縮機内部流動,特にチップ近傍の漏れ流れと凝縮位置および凝縮量との関係を明らかにする.これらは超臨界二酸化炭素を用いた次世代発電システムの構築において必要不可欠な知見となる.さらにこれまでに実施している加熱管路内の超臨界炭化水素流動の熱分解反応および遷臨界流動の解析を引き続き進め,多成分炭化水素流動中の正確な吸熱反応量および温度分布を再現可能な数値計算手法を構築し,遷臨界不安定流動と流量,加熱管路,加熱量などとの関係の解明する.これらの結果によって化学工学,エネルギー工学,航空工学などの様々な分野で用いられる遷臨界および超臨界条件下の多成分条件や液滴の存在する二酸化炭素および水,炭化水素の流動を包括的に解決することを目指す.
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