2019 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical design of highly ion conductive membranes for alkaline fuel cells using reactive molecular dynamics simulations
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19K14882
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
馬渕 拓哉 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (10795610)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アニオン輸送 / 高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ホッピング現象を考慮した反応性MDシミュレータを用いて電解質膜内におけるアニオン輸送メカニズムを解明することである。この目的は具体的に以下の3つのサブテーマに集約される。(1)ホッピング現象を考慮したアニオン輸送シミュレータの構築、(2)アニオン伝導特性を支配する水チャンネル形状特性の解明、(3)分子構造制御による高アニオン伝導性電解質膜の理論設計指針の提案。今年度は、これら3つのサブテーマのうち、主に(1)および(2)の内容を実施した。具体的には、電解質膜内におけるアニオンのホッピング現象はEmpirical Valence Bond (EVB)法により考慮し、そのパラメータは量子化学計算によりデータ取得を行い、得られたホッピングの際のエネルギー障壁を再現できるように決定した。これにより、従来は困難とされてきたホッピング現象をMD計算で扱うことを可能にした。さらに、同シミュレータを用いて電解質膜内のアニオン輸送特性の解明と支配因子の特定を実施した。水クラスター構造に関して(i)各含水率における水クラスターサイズ分布、(ii)水分子の水素結合により形成される一連のネットワーク構造の長さ、(iii)水分子1つあたりの平均水素結合数、のデータからクラスターの大きさや連結性を定量的に評価した。また、これら構造特性の温度、圧力、含水率等のパラメータとアニオン輸送係数の関係性から、アニオン輸送特性と水クラスターの連結性に強い相関があることを突き止めた。今後は、本モデルを用いて、異なる分子量や分子構造を有した様々な分子構造ポリマーのシミュレーションを実施し、安定した水チャンネルを形成できる構造条件を明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電解質膜内ではアニオンは水分子と結合して存在しており、このアニオンが単体で移動するビークル機構および水クラスターのネットワークを媒介としてアニオンがホッピングし,OH-が見かけ上移動するホッピング機構の2種類の輸送機構が提案されている。本研究ではホッピング現象を考慮するために,Empirical Valence Bond (EVB)法を基に改良を加えた独自の分子間相互作用のモデル関数を確立し,そのパラメータは量子化学計算の結果を基にホッピング時のエネルギー障壁を再現できるように決定した。これにより、従来は困難とされてきたホッピング現象をMD計算で扱うことを可能にした。さらに、同シミュレータを電解質膜モデルに導入し、ホッピング機構と電解質膜内部の数nm程度の大きさの水クラスター構造を同時に考慮した電解質膜内部での物質移動現象を解析し、これまで明らかにされてこなかったホッピング現象がアニオン輸送に与える影響を明確にした。同時に、得られたアニオン拡散係数は実験結果とよく一致しており、ホッピングモデルの妥当性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
最終的な目標である電解質膜の理論設計指針の提案に向けて、まずはどのような水チャンネル形状が高アニオン伝導性を発現することが可能か設計の方向性を見極める必要がある。また、水チャンネルの形状を特徴づける構造パラメータとアニオン伝導特性との相関を把握することが形状特性の解明には重要である。そこで本研究では、アニオンのホッピング頻度および密度分布からアニオン輸送機構および輸送経路を評価し、各構造パラメータとの関係性を明確にすることで、拡散係数を決定する構造支配要因を特定し、高アニオン伝導性を有する理想的な水チャンネル形状を提示する。さらに、共重合体を構成する各モノマーの主鎖骨格および側鎖長さを様々に変化させた分子構造のモノマーモデルを用意し、それらモノマーモデルの組合せを変化させることで異なる分子量およびブロック比を有した共重合体モデルを構築する。次に、各共重合体モデルにおける水チャンネル形状の長さや太さを特徴づける構造パラメータを解析することで、水チャンネル形状を決定するブロック共重合体分子構造の支配因子を特定し、高次ナノ構造形成メカニズムを解明する。また、系の状態(温度,圧力,含水率)の変化に対する水チャンネル形状特性の解析を行うことで、水チャンネル形状の安定性を評価し、これらの状態変化がアニオン伝導特性に与える影響を解析する。これらの知見を基に高アニオン伝導性を有する理想的な水チャンネル形状を安定的に示す分子構造を決定する。
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Causes of Carryover |
電解質膜内部のアニオン輸送を解析するシミュレータを完成させ、テスト計算を行ったところ、十分な精度の拡散係数を有する結果を得るためには予想に反して計算量(サンプル数)を大幅に増やさなければならないことが判明した。そのため、当初計画していたすべての計算を期間内に遂行させることが困難であることが判明したため、来年度の一定期間のみ計算補助を目的として技術補佐員を雇用する必要が生じた。
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Research Products
(4 results)