2020 Fiscal Year Research-status Report
超小型飛翔体開発のブレークスルーを目指したチョウの不安定な飛翔メカニズムの解明
Project/Area Number |
19K14885
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
鈴木 康祐 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (10735179)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 羽ばたき飛翔 / 数値流体力学 / 3次元動体追跡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,チョウがどのように速い前進速度と巧みな姿勢制御を実現しているか,という問題を解明することを目的として,実際のチョウの飛翔を動画で撮影し,翼を前後に振る運動や前後2枚の翼の動作の遅れを始めとした特徴的な動作を抽出する(トップダウン的アプローチ).さらにその動作をモデルに搭載し,流体力学の観点からその効果を考察する(ボトムアップ的アプローチ). 2020年度は,上記の目的のために,(1)実際のチョウの前進飛翔時の複数周期にわたる計測実験,(2)計測結果の数値モデルへの反映を行った.(1)においては,複数のチョウに対して複数回の計測を行い,チョウの前進飛翔時における翼の動きや胴体の動きについて,その一般的な特徴を明らかにした.また,前年度に行った飛び立ち時の計測結果と比較して,腹部の振りが抑制され,結果としてピッチ角および迎角も抑制されていることが分かった.さらに,(2)においては,これまでの他の研究では考慮されていなかった点まで数値計算に反映させ,より詳細にチョウの飛び立ち時の飛翔メカニズムを調べた.具体的には,これまでの研究では,前翼と後翼を区別せず一枚の板として翼を近似していたが,本研究では前翼と後翼の迎角差も考慮している.また,これまでの研究では,チョウの全質量が重心に集中しているとして質点の並進の方程式しか解いていなかったが,本研究では前後左右の翼4枚,胸部,腹部の計6つの剛体系からなる方程式を解いている.その結果,前翼・後翼の区別には大きな影響はなかったものの,翼の慣性力と腹部の慣性力は,チョウの数値モデルの運動に大きな影響を与えることが分かった.しかし,質点として近似する従来のモデルと,剛体系からなる本研究のモデルでは,軌跡に大きな違いはなかった.これは,翼の慣性力と腹部の慣性力が概ね釣り合っていることを示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.特に予期していない問題が起こったり,大きな課題に直面したりすることがなかったため. 2.採用者の所属している研究グループ内で活発な議論を行い,多くの有益な意見を得たため. 3.学会に参加し,他分野の研究者と活発な議論を行い,多くの有益な意見を得たため.
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Strategy for Future Research Activity |
現在まで順調に進展しており,研究の変更はない.研究計画通りに進める予定である.具体的には,(1)前進飛翔時の計測結果の数値モデルへの反映,(2)超小型飛翔体への応用の検討を行う予定である.
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