2020 Fiscal Year Research-status Report
マルチスケール定常解で解き明かす乱流の階層構造とエネルギー伝達機構
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19K14889
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
本木 慎吾 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (70824134)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 熱対流 / 乱流 / マルチスケール |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き,熱対流系におけるマルチスケール定常解(乱流秩序渦構造に類似したマルチスケールの渦構造を有する時間に依存しない解)の探索と解析を行った. 通常のレイリー・ベナール対流系(滑りなし非貫通および一定温度差条件を課した水平平板間の熱対流系)におけるマルチスケール定常解について,これまでの一連の研究成果をまとめた論文「Multi-scale steady solution for Rayleigh-Benard convection」がJournal of Fluid Mechanics誌に掲載された. また,周期箱熱対流系(鉛直方向に一定の温度勾配を課した3方向に周期的な系)においてもマルチスケール定常解を得ることに成功した.この系においては,elevator modeと呼ばれる時間の経過に伴って振幅が指数関数的に増大する鉛直方向に一様な線形解が存在するために,レイリー・ベナール対流系のように安定な定常解や時間周期解が現れず,解の分岐構造や統計的性質が十分に調べられていなかった.本研究では,3次元定常解が熱伝導解から亜臨界分岐により生じることを発見し,この解をニュートン法を用いて高レイリー数まで追跡した.その結果,この解は高レイリー数においてマルチスケールの渦構造を示し,乱流の統計的性質を再現することが分かった.3方向に周期境界条件を有する最も単純な系におけるマルチスケール定常解を得たことで,乱流の普遍的な統計法則の解明により近付くと期待できる. 多孔質壁面を模した貫通壁面間の熱対流系について,壁面上における熱伝達が熱伝導に支配されるにも関わらず,壁面熱流束が流体の熱伝導率に依存しない究極熱伝達が達成されることが分かっており,この系におけるマルチスケール定常解および乱流について調査を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レイリー・ベナール対流のマルチスケール定常解についての論文をJournal of Fluid Mechanics誌の記念号「Special JFM volume in celebration of the George K. Batchelor centenary」において発表することができ,また,3方向に周期的な領域におけるマルチスケール定常解を発見することが出来たため.これらの研究成果について,オンラインセミナー「George Batchelor Centenary-Fluid Mechanics Webinars Series」における招待講演が決定している.
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Strategy for Future Research Activity |
レイリー・ベナール対流系,周期箱熱対流系および貫通壁面間熱対流系におけるマルチスケール定常解を引き続き探索し,その性質について詳細な解析を行っていく.また,数値シミュレーションおよび実験において得られた熱対流乱流の秩序構造や統計的性質と比較することで,乱流の階層構造とエネルギー伝達機構の解明を目指す.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大により,参加を予定していた国内および国際学会・研究会が延期あるいは中止となり,旅費および参加費の支出が無くなったため内訳に大きな変更が生じた.研究課題の遂行に必要な物品の購入を行ったが,なおも生じた余剰金を次年度へ繰り越すこととした.当該助成金については次年度の学会旅費および参加費として,あるいは学会が開催困難な場合には計算機使用料として支出する予定である.
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