2019 Fiscal Year Research-status Report
Physical modeling of turbulence reduction by surfactant additives
Project/Area Number |
19K14893
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
堀本 康文 東京理科大学, 理工学部機械工学科, 助教 (60822525)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 抵抗低減現象 / 乱流抑制現象 / 非Newton流体 / 界面活性剤水溶液の流れ / Taylor-Couette流 / ultimate turbulence / 粒子画像流速測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
水の乱流に微量の界面活性剤を添加するだけで、乱流中の渦が抑制されて摩擦抵抗の低減が見込まれる。この現象は水溶液の粘弾性のために発現してその理解は困難であるが、流体輸送の省エネルギー化のためにきわめて有用でもあるので、物理メカニズムの解明が求められている。 令和元年度の成果として、まずは実験系の確立が挙げられる。実験的に抵抗低減現象を調査するため内外円筒が独立に回転する2重円筒間流れ(Taylor-Couette流)の実験装置を製作した。これはTaylor-Couette流の実験装置としては世界有数の大型なものであり、高いReynolds数における乱流を維持できる。Taylor-Couette流では内外円筒の回転状態により乱流中の最大スケールの渦の強さも容易に制御できるので、ultimate turbulenceとよばれる非常に発達した乱流に界面活性剤を添加した影響も調べられる。そして、粒子画像流速測定による乱流速度場の計測および円筒壁面にかかるトルクの計測から、界面活性剤を添加した場合の乱流の抑制を定量化できる計測系を構築した。 令和元年度の実験による主要な成果を以下にまとめる。(1)広範なパラメタ域における流れの可視化を行い、定常流から乱流までの多様な流れに対する界面活性剤の添加の影響を定性的に調査した。(2)流速測定で得た乱流速度場から、界面活性剤添加による平均流速分布の変化および半径方向と軸方向の著しい乱れの抑制を明らかにした。(3)トルク計測から算出した円筒壁面上での摩擦力の大きさから、界面活性剤の添加により発達した乱流の摩擦抵抗が低減し、さらに水の場合とは異なるべき乗則が成り立つことを発見した。以上の結果は、乱流を議論するために欠かすことのできない、角運動量輸送などの乱流輸送現象の物理メカニズムが界面活性剤添加により質的に変化することを示す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述のように、実験装置の製作および流速とトルクの計測は順調に進行し、乱流抑制現象を定量化できるようになった。一方、本研究のもう一つの軸である、蛍光プローブ法(水溶液中の界面活性剤ミセル構造を特定する計測技術)の実装には若干の遅れが出ているため、進捗状況は計画よりやや遅れていると判断した。蛍光プローブ法の実装が遅れた理由には、速度測定には高出力のレーザーを使用するため、安全な実験環境の構築に時間を要したことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度の初頭には蛍光プローブ法で使用する分光器が納品されて装置に組み込む予定であり、早急に実験を次の段階へ移行する。また、流速とトルクの測定結果の蓄積から、界面活性剤を添加した場合の流れの様相が明らかになりつつあり、実験と並行して本研究課題の最終目標である界面活性剤の流動を記述する物理モデルの構築にも取り組む。
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Causes of Carryover |
装置への実装が遅れている蛍光プローブ法に用いる試薬の購入費であるため、令和2年度での蛍光プローブ法のために使用する。
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