2020 Fiscal Year Research-status Report
壁面せん断応力センシングを駆使した壁面摩擦力分布の高精度予測モデルの創出
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19K14899
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
市川 賀康 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 宇宙航空プロジェクト研究員 (00825060)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 3次元3成分流速計測 / 非点収差PTV / 壁面近傍流動 / 壁面せん断応力 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は,非点収差PTV(APTV)における粒子位置の奥行位置決定手法に関して,昨年度から引き続き機械学習を用いた手法の高精度化に取り組んだ.まず.個々の粒子形状を特徴付けるパラメタは複数あるが,奥行位置の決定精度に及ぼす影響を各パラメタ毎に調べ上げ,学習に用いるパラメタの組み合わせをそれぞれ調べ上げた.その結果,粒子像の長軸,短軸およびそれらの差分,ピクセル数,アスペクト比,像の焦点の二乗という6パラメタの組み合わせを用いることで,粒子像形状に関係なく位置決定精度のばらつきを小さくすることができた.昨年度までは形状毎に位置決定精度のばらつきが変化することが課題となっていたが,それを改善し,どの位置に置いても同程度の精度で位置決定が可能となることを示した.また, 研究代表者の実験条件において,先行研究等で使用されている位置決定手法とも比較をした結果,比較的高精度かつ計算速度の向上が見られた.これらの内容については,現在海外誌に投稿中である. 壁面に塗布された油膜中の速度計測および壁面せん断応力計測も,昨年度に構築したプロトタイプの平行平板流路を使用し,予備実験を継続して行った.当該年度では,APTVを用いて油膜中の3次元3成分流速の測定可能性を示すために,Re~10^2程度の層流域において計測を実施し,理論解との比較を実施した.その結果,油膜中で直線的な流速分布が取得され,壁面せん断応力の定量化が可能であることを確認した.そして,流速分布が直線的になるため,APTVを用いることで壁面の位置を推定すること無く,速度勾配が決定できることを確認した.一方,計測で取得した壁面せん断応力は理論解と比較してエラーが大きく,壁面せん断応力の決定精度の改善が課題であることも明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度はコロナ禍における緊急事態宣言発令等により,研究代表者が当時の所属機関に約半年程度入構ができず,その期間実験が一切実施できなかった.油膜内流動が計測可能であることは示せているものの,試験条件を変化させた確認試験は行えていない.また,当初実施予定だった油膜の界面位置推定に関しても,壁面上に塗布する油膜の厚みのコントロールが非常に困難であり,試行錯誤が必要な状況となり,解決の目処が立っていない.そのため,当初の研究遂行予定よりもやや遅れていると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
油膜中の流動計測時に,トレーサである蛍光粒子の観測窓への固着や凝集が確認されており,それらが壁面せん断応力算出時のエラーの一因となることを確認している.今後はまず,それらを改善すべく,シリコンオイルに対する蛍光粒子の分散性の改善と,画像処理を駆使して,エラーの原因となる粒子像の影響の除去に努める.そして,壁面せん断応力算出精度の向上に取り組む. 上記の改善への取り組みと並行して,まず層流域においてレイノルズ数を変化させながら油膜内の流動計測を実施し,算出される壁面せん断応力と理論解との比較を実施して,手法そのものの有効性を示す.同時に,粒子位置から界面推定を実施する予定であるが,油膜の厚みをコントロールするため,流路壁面と観測窓に,流れに対して影響を及ぼさないような工夫を加えることを検討している. 層流域の計測において計測の有効性が示された後,更にレイノルズ数を変化させて,乱流域の計測にも取り組む予定であり,油膜内の粒子位置や流速の変動と流路の圧力変動の関係の調査と,壁面せん断応力の変化について考察を行う予定である. また,上記の流動計測と並行し,粒子位置の決定精度の向上にも取り組み,流動計測の結果と併せて当該研究成果をまとめる予定である.
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Causes of Carryover |
購入予定物品の当該年度調達の目処が立たず,代替品の購入と,所有していた物品で実験装置の構築をまかなった.その結果,次年度使用額が生じた.次年度は請求した額と合算して,適切な価格帯の物品の調達を行う予定である.
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