2020 Fiscal Year Annual Research Report
集積回路の温度安定性向上のための高熱伝導フレキシブル蓄熱フィルム開発
Project/Area Number |
19K14905
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
馬場 将亮 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (10826176)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 固―固相転移材料 / 相変化材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,固―固相転移蓄熱材料,樹脂を組み合わせた「高熱伝導蓄熱材料」の開発および他の材料と比較した優位性の明確化である.近年,回路の集積化により,CPU,パワー半導体などの電子機器の放熱特性向上が課題となっている.従来放熱技術は熱抵抗の低い素子を用いて,円滑に放熱部に熱を輸送するという考えが主流であった.本研究で開発した材料は熱を放熱部に円滑に輸送すると伴に,それ自体が蓄熱性を有しているため電子回路の発熱を吸収可能である.つまり,電子回路中に熱的な吸収体を組み込むことが可能となる.この特徴により,電子機器の瞬間的な発熱を低減し,温度安定性の向上が可能となる.本研究では,固―固相転移材料として二酸化バナジウムVO2を用いた. はじめにVO2と従来蓄熱材料であるパラフィンの温度平準化性能を比較した.一定発熱する発熱体に両蓄熱材を接合し,発熱体の温度の経時変化を測定したところ,V従来材料であるパラフィンと比較して温度平準化性能が高いことが明らかとなった. 次に,集中熱容量法を用いてVO2の熱解析モデルを作成した.作成したモデルを用いて各物性値が温度平準化性能に与える影響を分析した.分析の結果,熱伝導率が低下すると,ある値を境に温度平準化性能が急激に低下することが明らかとなった.この結果から,電子回路の温度平準化対して熱伝導率が主要な性能因子であることが明らかとなった.VO2熱伝導率(3~5W/mK)は,パラフィンの熱伝導率(0.2W/mK)と比較して高いため電子回路の温度平準化に適している. 最後に,VO2とシリコーンを複合した高熱伝導蓄熱材料を作製した.作製した材料は発熱体に塗布し乾燥させることで一体構造にすることができる.また,熱伝導率を向上させるために高熱伝導シリコーンを利用した.作製した材料の熱伝導率は従来蓄熱材料であるパラフィンより約10倍高い,2W/mKであった.
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