2020 Fiscal Year Research-status Report
Fabrication of asymmetric ceramic porous anode of solid oxide fuel cells for ultra-high fuel utilization operation
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19K14907
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岸本 将史 京都大学, 工学研究科, 特定助教 (10757636)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 固体酸化物形燃料電池 / 相転換法 / 異方性多孔質 / ガス拡散 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年度目はまず,相転換法により作製した非対称空隙構造を持つ燃料極支持体の上に,Ni-YSZ燃料極機能層,YSZ電解質,GDC中間層およびLSCF空気極を作製し,電気化学試験が行えるSOFCセルを作製した.無機材料とバインダ等との混合比率を調整して適切に製膜できる条件を探したが,初年度に作製した燃料極支持体には若干の反りがあったため,電解質や空気極にクラックが生じやすく,セル作製における再現性が悪かった.そのため,燃料極支持体の作製プロセスを見直した.具体的には,初年度では円筒状のくぼみに燃料極ペーストを流し込んでいたが,本年度はガラス板上にブレードを用いてテープキャストし,浸水して相転換を引き起こしたのちに円形にカットする手法に変更した.また,仮焼成時などに重りを乗せることで反りを抑制した.その結果,平坦な燃料極支持体を作製することができ,その上に作製する層の再現性が向上した.マイクロチャネルの構造については昨年度のものと顕著な違いがないことを確認した.加えて,スポンジ状空隙の多孔質構造をFIB-SEMを用いて観察し,空隙率や三相界面密度などの微構造パラメータを定量化した. その上でセルの電気化学測定を行い,通常の均一空隙構造を持つセルと性能を比較した.当初予定では発電性能のみを測定する予定であったが,近年SOFCを可逆作動させることで水電解を行う技術にも注目が集まっているため,電解性能も追加で測定した.実験の結果より,相転換法を用いて作製したセルは,従来手法で作製したと比べて低水素分圧条件における性能が高かった.また,発電性能と電解性能の間の非対称性も大幅に低減できたため,SOFCの可逆運転をする上で望ましい特徴を有することがわかった.これらのことは,燃料極支持体中のガス拡散性能が大幅に改善できたことが主な要因であった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年度目は,新型コロナウイルスの感染拡大の影響,および燃料極支持体の作製プロセスの見直しを行ったため,夏ごろまでの進捗は低調であったが,作製プロセスの見直しにより実験の成功率が高まり,結果として目標としていたセル性能の測定と従来セルとの比較を行うことができた.また,マイクロチャネルを有する燃料極支持体の微構造についても,予定通りの情報を取得することができた.加えて,セルの電解性能の測定を行ったことにより,本研究で作製したセルがSOFCの可逆運転のために望ましい特徴を有することを確認できたため,想定以上の成果を得ることができた.一方で当初予定していた,燃料極支持体の有効ガス拡散係数の測定については,セルの強度の問題で測定装置に保持することが難しく,有効な実験データを得ることができなかった.次年度に測定装置側の改良を行うことで測定を行う予定である. 上記を総合すると,2年度としては十分満足いく結果が得られたと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,2年度目に実施できなかった,非対称構造を持つ燃料極支持体の有効ガス拡散係数の測定については,測定装置の改良を行うことで実現を目指す.その上で,すでに取得しているガス透過率の情報と合わせて,本研究で作製した燃料極支持体が有するガス輸送性能の定量的なデータを取得することを目指す. また,燃料極ペーストの材料や組成を様々に変化させて,異なる構造を持つ燃料極支持体を作製し,そのガス輸送特性を測定することで,SOFCの性能をより向上できるような構造を探索する.その中で,非対称空隙構造の形成プロセスの解明に資する知見を蓄積する. さらに,非対称空隙構造を有する燃料極支持体を持つSOFCセルの数値計算を行い,セル内部における物理化学的諸量の分布などを取得することで,性能向上のメカニズムの解明と,性能のさらなる向上を目指した最適構造の提案を行う.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大により,夏ごろまでは研究の進捗が低調であったため,全体として後ろ倒しになったことと,学会が軒並み中止になったため当初予定していた旅費に対する支出がなくなったため,当初予定よりも使用額が減少した. 学会についてはオンラインでの開催が増えてきたので,3年度目は本課題における成果をより積極的に発信しようと考えている.特に7月に開催予定の17th International Symposium on Solid Oxide Fuel Cells (SOFC-XVII)は当該分野において最も重要な会議であるため,成果公表を予定している.
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