2019 Fiscal Year Research-status Report
濡れが非均一な狭隘微細構造により制限を受ける気液相変化現象の解明と高熱輸送化
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19K14908
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
植木 祥高 大阪大学, 工学研究科, 助教 (50731957)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 蒸発 / 微細構造 / 分子動力学 / 界面 / 相変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
蒸発はヒートパイプやヒートポンプといった幅広く工業機器において重要な物理現象であり,その促進や制御には大きなニーズが存在する.機器の伝熱は,主として固体壁を介した作動流体への熱の輸送を伴うため,伝熱面の表面の性状が大きく作用する.蒸発現象に着目すれば,固気液三相接触線からの蒸発量が支配的であり,伝熱面表面の物理化学特性を変化させることで蒸発の促進を得る試みが多くなされている.伝熱面表面の物理化学特性の変化には,化学的特性を変えることにより濡れ性を変化させることに加え,表面に微細構造を施すことにより実現することも可能である.近年の微細加工技術の進展によりナノスケールの表面構造を作製することが実現しているが,ナノ構造が蒸発をどのように,どの程度変化させることが可能であるのか,集成した物理的理解が得られているとは言い難い. そのような研究背景から,本研究にて表面に周期的なナノ構造を付与した伝熱面における蒸発現象について古典分子動力学法による分子熱流体解析と,実証実験を組み合わせて実施することにより,体系的な理解の獲得を図る. 該当年度において,ナノスケールの微細狭隘構造であるナノスリット系と,周期的にナノスケールの四角柱を配置したナノピラー系を対象として,分子動力学解析を行った.その結果,各種構造特性や濡れ性が蒸発量や流体分子の蒸発経路に与える影響を明らかとした.また,伝熱面の濡れ性が空間的非均一性を有する場合,蒸発過程での流体分子の挙動に影響を与えることを明らかにし,蒸発促進に寄与するものが存在することを示した.また,実証実験においては電子線リソグラフィーを活用した数百ナノメートルの表面周期構造を伝熱面に付与して,蒸発に与える寄与を評価した.その結果,接触角を予測する物理モデルが本研究の微細スケールまで適用可能であることを示し,蒸発促進に寄与する構造特性を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
分子動力学解析を用いた伝熱現象の詳細な理解が進展していることに加え,実験実証が進んでおり,体系的な物理現象の理解に繋がっている.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従って研究を実施するともに,研究成果を総括し原著論文として発表することとする.
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Causes of Carryover |
他の自主財源を試料作製費に充当したことにより,経費削減に努めていた最中にCOVID-19の影響により,参加予定の学会の開催中止・延期や共同利用施設の使用停止が重なったため. 翌年度は,国内学会での成果発表や原著学術論文への投稿を通して本課題で得られた研究成果を発信する予定である.加えて,ナノ微細構造面の濡れ性について実験的な定量評価を精緻に進める必要があることが分かったので,翌年度は濡れ性を評価する実験装置の購入に充当する予定である.
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