2019 Fiscal Year Research-status Report
クラスレートハイドレート法による海水淡水化/製塩ハイブリッドシステムの開発
Project/Area Number |
19K14911
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
安田 啓太 琉球大学, 工学部, 助教 (60760163)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | クラスレートハイドレート / 海水淡水化 / 製塩 / シクロペンタン / 二酸化炭素 / 結晶観察 / 共晶条件 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題ではクラスレートハイドレート(以下ハイドレート)の生成/分解により海水淡水化と製塩を同時に行う技術の開発を目指している。 ハイドレートは水と「ゲスト」と呼ばれる物質から構成される氷状の固体化合物である。海水中の電解質はゲストにならないことから、海水淡水化の媒体として利用することが検討されている。本研究課題では、ハイドレートの生成によって電解質の濃度が高まった海水から固体塩を析出させることで海水淡水化と同時に製塩を行う技術の開発のために、ハイドレート/固体塩の生成/析出過程を視覚的に観察し、さらにハイドレートと固体塩が同時に生成/析出する共晶条件の測定を行っている。海水淡水化と製塩を同時に行うことで、従来の海水淡水化技術で排水として処理されていた高濃度海水の有効活用が可能となり、環境負荷の低減とコストの低減が同時に達成されると期待される。ゲスト物質には安全性やコスト、ハイドレート生成の容易さの観点から二酸化炭素およびシクロペンタンを用いている。 2019年度は二酸化炭素ハイドレート生成系、シクロペンタンハイドレート生成系ともに実験系の構築から始めた。二酸化炭素ハイドレート生成系はガラス製の圧力容器から構成される。その内部で海水を模擬した塩化ナトリウム水溶液と気体二酸化炭素を反応させてハイドレート生成/塩化ナトリウム二水和物析出を行った。これらの生成/析出が視覚的に観察され、また、共晶条件についても一部測定を行った。シクロペンタンハイドレート生成系では試験管を用いて大気圧下で実験を行った。塩化ナトリウム水溶液と不溶性の液体シクロペンタンの液液2相系で実験を進め、シクロペンタンハイドレート生成/塩化ナトリウム二水和物析出を観察し、さらに共晶条件の測定を行った。2種の系ともに、当初想定していたように、生成したハイドレートと析出した固体塩の分離が可能であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二酸化炭素ハイドレート生成系では当初、2019年度は実験系の構築と、塩化ナトリウム水溶液の代わりに純水を用いた予備実験を行う予定であった。それぞれ順調に進展したため、塩化ナトリウム水溶液を用いたハイドレート生成/塩化ナトリウム二水和物の析出実験を行い、結晶観察と一部の共晶条件の測定を行うことができた。シクロペンタンハイドレート生成系では、2019年度は実験系の構築と純水を用いた予備実験に加えて一部の塩化ナトリウム水溶液を用いた実験を行う予定であった。こちらも順調に進展して、塩化ナトリウム水溶液を用いた系で実験を進めて、視覚的観察と共晶条件の測定の双方を行うことができた。これらのことから、実験の実施については「当初の計画以上に進展している」と考える。 成果発表について、当初の計画では2019年度中に国内学会・国際学会での発表を目指していたが、年度内に行うことができなかった。実験の進捗にともない、特許申請の可能性があり、学会発表を控えたためである。2019年度中は、2020年6月開催予定であった(COVID-19の影響で12月に延期)、10th International Conference on Gas Hydratesでの2件の研究発表のために学会投稿用の原稿の作成と投稿を行った。一方、当初2020年度後半での原稿作成を想定していた学術論文について、すでに原稿の準備を進めている。そのため、成果発表の観点からは「おおむね順調に進展している」と評価する。 実験の実施状況と成果の発表状況の双方をあわせると、研究課題全体としては「おおむね順調に進展している」と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
二酸化炭素ハイドレート生成系、シクロペンタンハイドレート生成系ともに、2019年度は実験を当初の予定よりも順調に進めることができた。2020年度はハイドレート生成/分解による海水淡水化/製塩技術の開発に向け、双方の系で温度・圧力をパラメータとして結晶成長観察を行うとともに、二酸化炭素ハイドレート生成系の共晶条件測定を進める。実験を行う際にはCOVID-19の影響が懸念されるものの、2019年度中に実験手法をおおむね確立したため、少人数・短時間での実験が可能であり、影響を最小限にとどめることができると考える。 成果発表について、二酸化炭素ハイドレート生成系、シクロペンタンハイドレート生成系ともに特許化と学術論文化を目指す。このうち、シクロペンタンハイドレート生成系の方が実験が進んでいるため、早期の特許化・学術論文化が期待される。学会発表については、10th International Conference on Gas Hydratesにて2件発表予定である。COVID-19の影響で学会が延期・中止になるケースが多くなることが予想される。その場合も、先に示すように特許化・学術論文化によって研究課題の最終年度である2020年度中に成果発表を行う。
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Causes of Carryover |
2019年度は交付申請書では物品費として1,800,000円、旅費として300,000円計上していたのに対し、実支出額は物品費が1,793,849円、旅費が56,440円、その他1,720円であった。このように、物品費がおおむね当初の計画通りの支出であったのに対し、旅費の支出が少なかった。そのため次年度使用額が247,991円生じた。旅費の支出が計画に比べて少なかったのは、当初2019年度内に想定していた学会発表を2020年度に行うことにしたためである。これは「現在までの進捗状況」に記載したように、研究成果の特許化を想定して学会発表を控えたためである。 2020年度は2件の国際学会発表を予定していて、旅費の使用が当初の予定よりも多くなると想定される。また、実験の進捗が順調であるため、使用する消耗品の支出も大きくなると考えられ、これらにより次年度使用額を使用する予定である。
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Research Products
(2 results)