2019 Fiscal Year Research-status Report
低温域における加熱媒体としての氷スラリーの凝固挙動および凝固熱伝達特性の解明
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19K14913
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
森本 崇志 青山学院大学, 理工学部, 助手 (30803259)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 氷スラリー / アイススラリー / ステファン解 / 凝固 |
Outline of Annual Research Achievements |
矩形流路を用いた氷スラリーの冷却実験を行い,氷粒子充填率,ブライン温度,スラリーのレイノルズ数が,氷スラリーを冷却した場合における凍結挙動に及ぼす影響について検討を行った.矩形容器内を流れるスラリーは伝熱板を介して,矩形流路上部および下部を流動するブラインによって冷却を行った.なお,実験に用いる氷スラリーは5.0 wt%のエタノール水溶液より生成した. 実験より,氷スラリーを流動させた場合においても,一般的な液体と同様に伝熱板から凍結が進行することが明らかになった.更に,実験が流動を伴うことから,凍結に伴う水溶液濃度拡散の影響は比較的小さく,凍結面の温度は固液相平衡温度に保たれていることが予想された.このため,液体の凍結速度の近似解として知られるStefan解と比較を行うことで,氷スラリーの場合の凍結速度の比較検討を行った.比較検討の結果,氷スラリーを冷却した場合には,スラリー中に存在する氷粒子の堆積の影響から,近似解に比べ,凍結速度が速くなることが明らかとなった.特に,低レイノルズ数の条件において,矩形流路上部での凍結速度が速くなることが明らかとなった.一方,スラリーの流動に伴うせん断力の発生による凍結層の剥離などは確認されず,ブラインとスラリーの温度差を小さくすることで凍結の発生を遅らせることができることが分かったものの,流動条件を変化させることによる凍結進行の阻害は困難であった. 以上の結果より,氷スラリーの凍結が発生してしまった場合,存在する氷粒子によって凝固層の凍結速度が加速されることが明らかとなった.このため,氷スラリーを加熱媒体として利用する場合,成長する凍結層が剥離されるような処置を施す必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
氷スラリーのレイノルズ数,氷充填率,ブライン温度が氷スラリーの凍結挙動の把握および凍結挙動に及ぼす諸因子の影響の検討は終えることができた.しかし,凍結阻害に有効な手段の提案まで至っていないため,凍結阻害手段の提案が今後の研究課題である.また,今後実施予定である氷スラリーを冷却した場合における熱伝達係数の計測実験に用いる二重管型熱交換器の製作は終えることができており,予備的な実験を終え次第本実験に取り組む予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度は比較的低濃度の水溶液を使用した氷スラリーを用いて冷却実験を行っており,未凍結層を有するもろい氷の形成は確認されなかった.しかし,比較的高濃度の水溶液を利用した場合には,流動を伴う場合でも,未凍結層を有するもろい氷の形成が予期され,もろい氷が形成された場合には,流動にともない凍結層の剥離が生じる可能性がある.このため,今後は氷スラリーを生成する水溶液の濃度が氷スラリーの凍結過程に及ぼす影響について検討を行う. また,今年度は前年度作成した二重管型熱交換器を用いて,氷スラリーを加熱媒体として用いた場合の熱伝達率計測実験も行う予定であるため,並行して実験を行っていく.ブラインと氷スラリーの温度差が小さい場合凍結開始が遅れることが前年度の研究から明らかとなっているため,まずは,凍結が進行していない状況における氷スラリーの熱伝達率を計測することで,基礎的な知見を得る.
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Research Products
(2 results)