2019 Fiscal Year Research-status Report
自己組織的3次元ナノポーラス構造の創製と高性能伝熱面への応用
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19K14918
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
馬場 宗明 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究員 (10711773)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 熱交換 / 伝熱促進 / ポーラス材料 / 凝縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノメートルからマイクロメートルスケールの微細構造による超撥水面形成および超撥水面と超親水面のパターニングによる濡れ性勾配を設けることで、凝縮液滴生成密度や液滴自発跳躍現象、動的な液滴供給・排除を制御し、伝熱面姿勢によらない凝縮熱伝達特性の飛躍的な向上を試みた。合金化条件、溶解条件(処理温度や印加電位)を系統的に変更した一連のプロセスにより、ポーラス構造の形成条件を明らかにするために、母材としてシリコンウエハを用い、表面に銅-チタン、銅-アルミ等の合金化・脱合金化による金属製ナノポーラスの自発形成試作を実施した。さらに、母材であるシリコンウエハにマイクロメートルスケールオーダのピラー形状をドライエッチングによりあらかじめ製作することで、階層構造の創製を試みた。試作したナノ・マイクロ階層構造は条件により超撥水特性を有していることがわかった。試作した超撥水微細構造表面を用いた凝縮実験を行い、凝縮液滴・凝縮液膜挙動の観察による自発跳躍現象の臨界直径、液滴直径と跳躍速度の相関関係を調べた。製作したポリカーボネート流路に設置した微細構造面を下面よりペルチェ素子を用いて冷却し、15-20℃、相対湿度50%程度に調整された加湿空気を流入させることで表面に形成された凝縮液滴挙動を観察した。上面からは凝縮液滴の発生・成長・合体現象をマイクロスコープにより観察し、側面からは液滴の自発跳躍挙動や跳躍距離を測定するために高速度カメラでの観察を行った。今回製作した階層的ナノピラー構造表面では、目的としていた自発跳躍凝縮を確認するとともに、跳躍する液滴径と自発挑発数の関係から、凝縮熱伝達向上に寄与するとされる10-40μm程度の液滴径の跳躍が支配的な構造であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
合金化条件や溶解条件をパラメータとして系統的に変更した一連のプロセスの実施により金属ナノポーラス構造の形成条件が明らかにすることができた。また、シリコンウエハの微細加工技術と複合化させることでマルチスケールの微細構造体製作を行う目途をたてることができた。これらの微細構造表面は凝縮実験に供することで、滴状凝縮および液滴の自発跳躍を発生させることを確認しており、最終的に目標としている沸騰・凝縮挙動の制御のうち凝縮挙動の制御に用いることができることが傍証された。 また、伝熱面の温度評価のために、感温蛍光粒子(Temperature Sensitive Paint、以下TSP)については先んじて感温分子である白金ポルフィリンを用いて伝熱面への塗布および処理条件を変更させた検証を進めており、温度のみに依存して励起発光強度が変化する波長帯評価することで、良好な温度感度を有することが確認できている。これにより、2年目には製作した高機能伝熱面の相変化伝熱への影響については、現象解明論的議論まで進める目途を立てることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
脱合金化プロセスにおける熱処理による拡散促進による孔径拡大や融点降下よりも低い温度で粗大化については脱合金化メカニズムの解明までは至っておらず、現象解明までを実施する必要がある。そのために、これまでに試作した多孔体構造部材の表面分析等を行うことで構成材料比を調べる。これらの分析装置については、所属研究機関において共用設備として利用することができるため、本研究においても活用する予定である。しかしながら、昨今の新型コロナウイルス拡大防止のために、2020年度の設備利用が遅れているため、分析機器については所属研究機関のデバイス技術研究部門の協力を得る体制とする予定である。また、Nano/micro微細構造としてCu等の金属ピラーを芯としてその外壁にポーラスが形成された形状や中心部空洞形状などの3次元的なMetal-porous-wireの形成についても試行することで、キャピラリーの効果を最大限発揮させた高機能伝熱面の開発を試みる。新規に製作する微細構造サンプルについては、初年度に製作した沸騰・凝縮装置を用いることで基本的な熱伝達特性を系統的に実施する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス拡大防止のために、年度末の出張を控えることとしたため、使用額に若干の差異が生じた。これについては次年度に出張旅費として使用する予定である。
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