2020 Fiscal Year Research-status Report
Formulation of human tasks based on time-varying joint impedance
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19K14933
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
矢木 啓介 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 助教 (90802710)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 力センサレス関節インピーダンス推定 / 作業中の関節インピーダンス推定 / ペダル運動 / ペグインホール / ジャグリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,何らかの作業においてフェーズ毎に変化する人関節インピーダンスを推定し,キネマティックな情報と関連付けて作業を記述することである.本年度は動作中の各関節の運動軌道から摂動入力に対する応答を抽出するデータ処理法の確立とタスク定式化の方法,パイロットテストが計画されていた. 本年度の実績は力センサレスでの関節インピーダンス推定法の確立と,運動中の足関節インピーダンスの推定,ペグインホール中の手関節インピーダンスの推定の3項目である.さらに,当初計画のハンマリングに替えて,同じく道具を扱う技能としてデビルスティックジャグリングを選定し,関節インピーダンスの観点から人の手首の使い方に関する新たな知見を得た. まず,本年度にて飛び移り座屈機構を利用する力センサレスでの関節インピーダンス推定法を確立させた.この手法を用いてペグインホールとデビルスティックにおける手関節インピーダンスのフェーズ毎の推移を得た.ペグインホールに取り組んだ成果はロボティクスメカトロニクス講演会2021で発表予定である.デビルスティックに取り組んだ成果は,予備実験結果については国内会議 RSJ2020で発表済みであり,セミプロの方のご協力で得られた実験結果は世界最大のロボティクス系国際会議 IROS2021に投稿中である. 一方で足関節については,前年度から補助的に開発を進めてきたダイレクトドライブ型の摂動入力装置を用いて一般的な周波数応答法によりインピーダンス推定を実施した. まず準静的な状況で筋活動の有無によって推定値が変化することを確かめた.次に環境との物理接触が一定な運動タスクとしてペダル運動を選定し,フェーズ毎に推移するインピーダンスを得た.準静的条件での成果は国内会議 茨城講演会2020,ペダル運動時に取り組んだ成果は国内会議 SICESI2020でそれぞれ発表済みである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
作業中の人間関節インピーダンス推定に向け,2020年度は外部摂動に対する関節応答を抽出するデータ処理法の確立とタスク定式化の方法,パイロットテストが計画されていた. データ処理法については,作業中の関節に対して,摂動入力を実施した場合の角度変化の時系列データと,実施しなかった場合の時系列データとを用意し,時間領域で差分を取って摂動への応答を求める手順を検討した.これについて,ペグインホールタスクとデビルスティックタスクを対象として,パイロットテストを実施し,準静的条件で得た結果との整合性から妥当性を検証するところまでを終えた. タスク定式化の方法については,対象タスクのフェーズ毎に離散時間的に得た関節インピーダンスの推移を連続時間化する手順を考案した.これにより,対象タスクの1サイクルを正規化した時間軸上で,関節角度,筋活動,関節インピーダンスの推移を1つの時間変数で関連付けることが可能となり,人体を単純なリンクとみなしたモデルによる数値シミュレーションでその動作を確認した. 一方で,補助的に開発を進めていたダイレクトドライブ型の足関節専用摂動入力デバイスの製作も現在までに完了している.2020年度は開発したデバイスを用いて,周波数応答法に基づく足関節インピーダンス推定のパイロットテストを実施した.実験条件は,着座した状態で足関節回りの筋活動が無い場合と有る場合,随意運動としてペダル運動中の場合の3通りとした.ペダル運動は歩行の前段階として選定しており,この条件に取り組む中で,人の随意運動を含む関節角度変化の時系列データから摂動入力に対する応答を抽出する方法を検討した.入力信号が既知であることから,周波数領域で成分比較を行う手順を検討し,パイロットテストにて検証するところまでを終えた. 以上より,本研究計画の進捗状況としては,おおむね順調といえる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では得られた成果のソフトロボット制御技術への応用を見込んでいる.その意味で,何らかのタスクを実現する動作中の各関節の運動学や柔らかさの推移に対して,これらにフィットする時間関数を得ることがタスクの定式化に向けた1つの目標となる. 2020年度中に実施した予備実験で得た知見に基づき,2021年度は複数名の参加者を募って関節インピーダンス推定実験を行う.対象とするタスクは歩行,ペグインホール,デビルスティックの3つである.歩行についての実験では,ダイレクトドライブモータを利用した摂動入力デバイスを用いて参加者の足関節へ摂動を加えるものとし,周波数応答法に基づき関節インピーダンスを推定する.ペグインホールとデビルスティックについての実験では,飛び移り座屈現象を利用する摂動入力デバイスを用いて参加者の手関節へ摂動を加えるものとし,本研究で確立させた力センサレスの手法により関節インピーダンスを推定する. 歩行とペグインホールは日常の身近な動作であり,これらについては平均的な運動パターンの記述を得ることを念頭に置いて実験結果の取得および解析を進める.一方,当初計画に含まれていたハンマリングタスクや再選定したデビルスティックのタスクでは,手関節の柔軟特性の調節によって,上肢の運動で生じるパワーを外環境へ上手く伝達させることが重要であり,参加者の運動スキルに依存して異なる実験結果が得られると予想される.したがって,これらのタスクについては,経験年数等で参加者をクラス分けし,各グループで平均的な運動パターンの記述を得るものとする. こうして得た各タスクの記述式をもとに,身体と環境の間のエネルギーやパワーの流れの調節という観点から,ソフトロボットの制御技術としての応用を検討する.
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Research Products
(6 results)