2019 Fiscal Year Research-status Report
中気圧プラズマによる化学処理性能大幅向上に向けた、ラジカル生成・反応機構の解明
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19K14968
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
中川 雄介 首都大学東京, システムデザイン研究科, 助教 (80805391)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中気圧プラズマ / ラジカルフラックス / 窒素原子 / レーザー分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
プラズマを用いた酸化・還元処理(化学処理)では、化学活性種(ラジカル)が重要な役割を担う。従来、プラズマ化学処理は1 kPa以下の低圧で行われてきたが、大気圧下のプラズマを利用することで、高密度のラジカルを簡便な装置で生成可能であり、低圧に耐えられない生体等様々な分野に適用できることが分かってきた。一方、大気圧プラズマでは、ラジカルの寿命が短く有効ラジカルフラックスが少ないうえ、処理が局所的になるという問題がある。 本研究では、大気圧近傍でわずかに減圧した中気圧のプラズマを用いて、処理対象の多様性を確保したまま、ラジカルフラックスの向上と均一処理の実現を図る。中気圧下では、ラジカルの密度を大きく損なうことなく、ラジカル寿命を延ばすことができると予想している。これを検証するため、0.1気圧~0.9気圧のプラズマにおける主要ラジカルの密度をレーザー分光法で測定する。 2019年度は上記目的を達成するための高精度レーザー分光システムを構築し、窒素プラズマにおける主要ラジカルである窒素原子密度の時間変化をレーザー分光法で測定した。高感度ICCDカメラによりプラズマ領域を観測した結果、0.3気圧では1気圧に比べて約2倍のプラズマフィラメント半径を有することが分かった。即ち、中気圧下ではプラズマの均一性が向上すると言える。また、窒素原子密度を二光子吸収レーザー誘起蛍光法で測定した結果、0.3気圧における窒素原子密度は大気圧下の70%を維持できることが分かった。このとき一定ガス流量におけるラジカルフラックスは30 kPaで極大になり、中気圧プラズマは化学処理性能向上において有効であることが示された。更に大気圧下の酸素プラズマにおいて、従来不明であった酸素原子とオゾンの挙動の同時計測を実現し、減衰と飽和の時定数の差異から、酸素原子再結合反応がオゾン生成飽和において重要となることを解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、2019年度中に(1)実験系構築、(2)純窒素プラズマにおける窒素原子測定、(3)窒素+アルゴン混合ガスプラズマにおける窒素原子測定 の3項目を行う予定だった。今年度は(1),(2)を達成し、当初予想していた「中気圧プラズマによる、ラジカルフラックス向上とプラズマ均一性の改善の両立」という命題について、純窒素プラズマに関して実験的に確認できた。この点は本研究において大きな意味を持つ。 一方、(3)の混合ガス下での窒素原子測定はできなかったが、2020年度に予定していた酸素プラズマにおける測定を先行して行った結果、測定上の課題の抽出・解決を実施できた。このことから、全体の研究計画上では概ね順調に進展していると結論づけられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は当初の予定通り、以下の2項目を実施する予定である。 (1)窒素+希ガスの混合ガスプラズマについて、中気圧下での窒素原子密度の挙動を測定 (2)酸素+希ガスの混合ガスプラズマについて、中気圧下での酸素原子密度の挙動を測定 これらの結果を用いて、中気圧プラズマにおける窒素原子、酸素原子の生成反応過程の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
保有しているレーザー装置が購入後20年以上経過して老朽化しているため、当初予定では130万円を投じて2019年度にオーバーホールを実施する予定だった。しかし本年度の研究環境構築において予備実験を行ったところ、レーザー装置が稼働する状況だったため、実験を優先しオーバーホールは後回しとした。 現時点ではレーザー装置は稼働しているが、実験中に動作不安定になる場面が複数回みられたため、オーバーホール自体は必要な状況である。よって残額は次年度使用する予定である。
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Research Products
(15 results)