2019 Fiscal Year Research-status Report
Leaked information estimation based on atmospheric turbulence toward secure free-space optical communications
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19K14992
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
遠藤 寛之 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所量子ICT先端開発センター, 研究員 (50809704)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光空間通信 / 情報セキュリティ / 物理層安全性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、光空間通信における情報漏えいと大気ゆらぎにより引き起こされる各種の効果とを関連付けるために、大気ゆらぎを測定する手法を開発し、その手法を情報漏えいの予測や光空間通信における秘匿通信へと応用することを目的としている。 初年度では、大気ゆらぎ測定手法の詳細検討を進める過程で、情報通信研究機構と電気通信大学を結ぶ7.8kmテストベットにおける光伝搬実験において蓄積されたデータの解析を行い、大気ゆらぎや気象条件が光空間通信における情報漏えいに及ぼす影響の解明に取り組んだ。日の出に伴う温度上昇による建物や実験装置の伸長、降雨の直後に漏えい情報量が増加する現象などが見られたため、これらの内容を現在投稿中の光空間通信における秘匿通信に関する論文に加えた。 また、この解析から得られた知見に基づき、光空間通信で伝送した乱数列から暗号鍵を作り出す秘密鍵共有と呼ばれる手法について、大気ゆらぎの影響によって受信強度が大きく低下しているデータを削除することで鍵生成効率の改善を図る適応的な信号処理を考案した。この信号処理をフィールド実証実験から得られたデータに適用することで実際に鍵生成効率を改善できることが明らかになったため、国際会議にて発表するとともに特許を出願した。 併せて、これらの研究を進める過程で、量子鍵配送同様に単一光子検出器で光信号を受信する秘密鍵共有方式を着想した。この手法について数値計算を行った結果、攻撃モデルが盗聴に制限されている状況下では非常に高い鍵生成効率を持つことが明らかになった。将来の遠距離通信に最適な手法であるため、宇宙通信に関する国際会議で初期的な結果を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、既存データに対する大気ゆらぎや気象条件がもたらす効果の解析と、それらの知見を適用することによる既存プロトコルの改善を先行して行うことにより、本研究で開発する大気ゆらぎ測定手法によって得られるデータの活用方法が明確化された。この手法の核となる、大気ゆらぎの度合いを計測するためのDIMMセンサの開発は完了しており、初期データの取得を開始している。併せて、受信側から照射するためのビーコン光のセットアップも完了している。さらに、これらの装置から得られたデータから機械学習的手法に基づいて漏えい情報量を推定する技術について、要件の整理が完了している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、DIMMセンサによる大気ゆらぎに関するデータの取得を進めていき、それらが光空間通信における漏えい情報量に及ぼす影響を、光空間通信や情報理論の研究で伝統的に用いられている指標を用いて定量化していく。同時に、以上の装置から得られた大気ゆらぎに関する情報や、気象センサ群から得られたデータを元にして、情報漏えいを推定するためのプログラムの開発を行う。以上の手法や、その開発過程で得られたデータについて、論文投稿や学会発表を行う。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた光学部品の購入費が少なく済んだため。この金額を2020年度における光学部品の購入へと充てる予定である。
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