2019 Fiscal Year Research-status Report
痛風の原因となる尿酸ナトリウム結晶の磁場と光による新規検出法の開発
Project/Area Number |
19K14994
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
武内 裕香 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 助教 (90758765)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 尿酸ナトリウム結晶 / 磁場配向 / 近赤外光 / 関節液 / 痛風 |
Outline of Annual Research Achievements |
痛風の原因物質である尿酸ナトリウム(MSU)結晶は体温の低い手足の関節等に好発し,関節の炎症や激痛を引き起こす。本課題は,体内に存在するMSU結晶の有無を体外から評価することを目指している。先行研究においてMSU結晶は,100ミリテスラの静磁場下で「磁場配向」することが明らかになっており,結晶の懸濁液に光を透過すると,磁場のON-OFFで光強度が変化することが報告されている。この現象を利用し,磁場と近赤外光によるMSU結晶の検出法の確立を目的とした。 MSU結晶は通常関節液中に存在しており,関節液は水と比べて非常に粘度が高いため結晶が高粘度液中で素早く磁場に応答しなければ診断には結びつかない。そのため広い粘度の範囲での診断能力を実証することが必要である。本年度は,まず磁場印加中での近赤外分光システムを構築し偏光測定と顕微分光測定を可能にした。本システムは反射と透過の双方に対応しており,コリメートした入射光に対し0と180°の角度から光をピックアップできる。このシステムを使用して高粘度液中に存在するMSU結晶の挙動の観測を行った。その結果1250 mPa・sの粘度中に分散した結晶は,500 mTを印加した際,約300秒かけて配向し,400 mPa・sでは60秒,90mPa・sでは数秒で配向は完了した。一般に,関節に炎症が発生すると粘度は約300 mPa s程度に低下するため,関節液中のMSU結晶を現実的な時間スケールで配向させることが可能であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は磁場中での近赤外光システムの構築及び高粘度域中での結晶の磁場応答について実験を行った。従来の低粘度領域で確立された理論によれば,MSU結晶の磁気配向には非常に長い時間が必要とされる。しかし,実験より高粘度領域ではMSU結晶の磁気配向は理論値よりも短い時間で配向し,磁場および近赤外光を用いた痛風診断が現実的な時間スケールで診断可能であることを示した。以上のことから,おおむね実験計画通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は結晶の検出の際の光応答性(検出感度)について検討する。検出感度は可能な限り高いものであると望ましく,磁場配向による光検出の最高感度について検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
次年度の実験のための高感度検出システムを構築する予定であったが,当初の予定よりも検出範囲を拡張させることにした。そのため光学部品などの周辺機器について再選定を行ったため購入に時間を要した。次年度使用額は検出感度向上のための物品の購入に使用する。
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