2019 Fiscal Year Research-status Report
High resolution beamforming for phased array weather radar using an adaptive signal processing
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19K14997
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
菊池 博史 電気通信大学, 宇宙・電磁環境研究センター, 助教 (40783105)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | レーダ / 高解像度化 / ビームフォーミング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は気象用フェーズドアレイレーダに対して適用可能な超解像(super-resolution)技術に関してサーベイを行った.先行研究として行ってきたMinimum Mean Square Error(MMSE)規範のビームフォーミング手法を発展させる方法について検討した.MMSE規範のビームフォーミング法は非常に効果的にサイドローブを抑圧できることが確認されている.一方で現在の方法ではアンテナ開口径によってビーム幅が固定されてしまうことから,超解像技術としての応用はできない.本手法は干渉波に対してヌル点(ゲインを抑える)を向けるヌルステアリング効果を応用してメインローグのビーム幅を細くすることが出来る可能性について検討した.まず,初期検討として,非アダプティブビームフォーミング手法であるフーリエビームフォーミング法を用いたビーム形成を行う.次に,所望方向から数度ずれた地点にターゲットがあると仮定して同様にフーリエビームフォーミング手法によりビームを形成する.数度ずれたアンテナパターンは所望方向にヌル点が集まる形となり,二つのパターンを合成することで所望方向のメインビームを細く出来ることに成功した.これにより,高解像及びサイドローブ抑圧が可能となることを確認した.但しゲインの低下や所望方向以外のアンテナゲインが増加している影響についても今後検討する必要がある.特に振幅情報に関して,高解像度化の効果を得ることは出来たが,降雨による受信信号はインコヒーレントな信号と考えられるため位相情報を維持できるか等について今後検討を拡大する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,気象用フェーズドアレイレーダに対する適応信号処理を応用した高解像度化を目的としている.本課題で提案する技術は,次世代の気象レーダとして期待される大型の気象用フェーズドアレイレーダへの適用を目的とし,遠距離観測においても高解像度を維持した降雨観測が可能となり,従来の気象レーダと比して高速・高精度な降雨観測が可能となる.更にクラッタエコーや強い降雨による疑似エコーの抑圧など副次的な効果も期待できる.本課題では,高解像度化を可能とする新たなディジタルビームフォーミング手法を提案し,その実用性を考慮した信号処理アルゴリズムの開発を行う.本研究が達成されれば静止気象衛星搭載型レーダなどへの技術移転が期待できる.フェーズドアレイレーダのビーム形成手法であるディジタルビームフォーミング手法に超解像技術である適応信号処理(例えば,Multiple signal classification (MUSIC)法,Minimum Mean Square Error(MMSE)法及び圧縮センシング)を応用し,降雨観測(ターゲットがインコヒーレントかつ分散性)に特化した新たな手法を提案しており,本年度は,本研究のサーベイおよび初期検討を行った.初期検討内容として,フーリエビームフォーミング法をアンテナパターンを複数の方向に作成して,所望方向のメインビームのビーム幅を狭くすることで高解像度化が可能であることを数値シミュレーションによって示した.ただし,受信信号に対する位相情報の維持や,降雨による受信信号に対する影響について今後検討する必要があることがわかった.今後これらの問題点を解決する方法について検討を行う.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度のサーベイおよび初期検討結果を踏まえて,今後さらに実用可能な手法について検討していく.提案手法を降雨観測データへの適用可能性と観測精度の検証を行うために数値シミュレーションを行う.実際に用いる降雨観測シミュレーションモデルは先行研究で行った手法を利用する.当研究では降雨をターゲットとした場合その分散性及びランダム性を考慮するモデルを構築した.シミュレーションによる精度検証を終了した後,実データを用いた検証を行う.実データでは実際に大阪大学及び埼玉大学に設置されているX帯PAWRを用いた実験とデータ解析を行う.また,降雨観測精度を検証するために全国に配備されたアメダスによる地上雨量計のデータとの比較を行い提案手法の有効性を検証する.更に,気象レーダにおける実装を考慮した場合,適応信号処理は計算コストが大きくなりリアルタイム観測を困難にする.気象災害の予期・予測にはリアルタイム観測が必須であるため,本課題では,前年度までの検討結果を踏まえて提案手法をリアルタイム観測が可能な低計算コストのアルゴリズムの開発へと発展させる.特に適応信号処理に必須の逆行列演算の高速化とその影響について考察する.逆行列演算の高速計算処理は様々な方法が提案されており,前年度までの解析結果とも比較することで,その有効性を示す.
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Causes of Carryover |
本年度は,当初研究のサーベイについて図書の購入(物品)及び,解析用PC(物品)及びディスプレイ(その他)の購入を予定していたが,サーベイにあっては当初予定していた図書が入手困難であったことから来年度以降に購入を検討した.一方で解析PCに関しては予定通り購入し数値シミュレーションに利用した.また,ディスプレイに関してはリモート接続により解析PCを利用することで不要となったことから,サーベイのための学会参加費に変更した.来年度持ち越し分に際しては,実データ収集時のデータサーバ及びHDDの購入を予定している.
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