2019 Fiscal Year Research-status Report
超スマート社会における即時検査を目的としたウェアラブル非破壊検査デバイスの開発
Project/Area Number |
19K15002
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
鈴木 大地 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (80823640)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | テラヘルツ / 光熱起電力 / フレキシブルスキャナー / カーボンナノチューブ / 非破壊検査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においてカーボンナノチューブ(CNT)を材料とするウェアラブル非破壊検査デバイスの開発を目指す。2019年度の研究では、フレキシブルテラヘルツ(THz)検出器の小型化及び2次元配列化技術の確立に取り組んだ。 まず、検出器の小型化に向け、材料であるCNT膜に0.1mm間隔でドーピング液を塗布する技術の開発に取り組んだ。当初の計画ではニードル式塗布機構やナノインクジェット法を用いてドーピング液の微小量塗布を行うドーパント塗布法により小型化を行う予定であった。しかし、研究を進めるうちに、CNT膜のようなネットワーク材料に微少量のドーピング溶液を塗布しようとすると毛細管現象による吸出しや膜構造の不均一性により狙った位置に再現性良く正確な量のドーピングを行うことが困難であることが判明した。そこで本研究では代替案としてビスマス等ゼーベック係数が負の金属を導入することで、検出器の感度を保持したまま1素子のサイズを0.1 mmまで小型化することを達成した。次に、検出器の材料であるCNT自立膜をマイクロスケールで2次元に配列する技術の確立に取り組んだ。レーザー加工機により2次元状にスリット加工されたポリイミドフィルムを使用することで、CNT自立膜を狙った位置に成膜する自己整合成膜技術を確立した。加えて、フィルムの種類やCNT分散液の濾過量等の成膜条件を明らかにし、100%の歩留まりを達成した。 上記2技術を合わせることで、本研究において100画素のフレキシブルTHzカメラを作製することができ、ウェアラブル非破壊検査デバイスの基盤技術を確立することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の研究ではフレキシブルTHz検出器の小型化及び2次元配列化技術の確立に向け、ドーピング液の微少量塗布技術およびCNT自立膜をマイクロスケールで2次元に配列する技術を確立する予定であった。ドーピング液の微少量塗布技術については、当初の計画ではニードル式塗布機構やナノインクジェット法を用いて小型化を行う予定であったが、研究を進めるうちに、CNT膜のようなネットワーク材料に微少量のドーピング溶液を塗布しようとすると毛細管現象による吸出しや膜構造の不均一性により狙った位置に再現性良く正確な量のドーピングを行うことが困難であることが判明した。そこで本研究では代替案としてビスマス等ゼーベック係数が負の金属を導入することで、検出器の感度を保持したまま1素子のサイズを0.1 mmまで小型化することを達成した。また、CNT自立膜をマイクロスケールで2次元に配列する技術については、当初の予定通りレーザー加工機により2次元状にスリット加工されたポリイミドフィルムを使用することで、CNT自立膜を狙った位置に成膜する自己整合成膜技術を確立した。加えて、フィルムの種類やCNT分散液の濾過量等の成膜条件を明らかにし、100%の歩留まりを達成した。 研究成果としては、学術論文についてはCarbon誌への掲載および2020年4月末時点で1編投稿中、学会発表については8件(うち3件が招待講演)の成果を残すことができた。 以上の点から、2019年度は当初の計画通りおおむね順調に進展していると評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は当初の計画であるウェアラブル非破壊検査デバイスの開発と即時検査応用の実証実験に取り組むとともに、ドーパント塗布法に代わるドーパント蒸着法の確立を目指す。ドーパント蒸着法については、Nドーパントであるジメチルベンズイミダゾール誘導体をシャドーマスク越しにパターン蒸着することで、0.1mm角以下でのCNT膜のNドーピングを実現する。 次に、フレキシブルTHzカメラの電極配線に伸縮性を有する導電性有機樹脂材料を導入することで、ウェアラブル化を目指す。本研究では有機樹脂の塗布方法や検出感度への影響、折り曲げ疲労への耐久性等を調べると共に、金属電極と有機樹脂の併用や、中継ワイヤーを組み込む等、ウェアラブル化に適した電極配線構造を明らかにすることで、指先に装着可能なウェアラブル非破壊検査デバイスを作製する。 最後に、超スマート社会においてどのような非破壊検査応用のニーズがあるのかを検討すると共に、実証実験により検査デバイスに求められる感度、周波数、設置方法等の条件を明らかにすることで、本検査デバイスを使用したロボット等の稼働現場における即時品質検査や、検査デバイスを配管内部に組み込んでの工程内検査等、既存のTHz計測システムでは難しかった検査応用の実現を目指す。
|
Causes of Carryover |
当初計画ではドーピング塗布法で微細ドープを行う予定だったが、研究を進めるうちにそれが困難であることが判明し、当初購入予定であったディスペンサーを購入しなかったため。来年度はドーパント塗布法に代わるドーパント蒸着法の研究に取り組む予定であり、来年度の助成金と合わせ蒸着器やNドーパントの購入費用に充てる計画である。
|