2019 Fiscal Year Research-status Report
コウモリの生物ソナーからひも解く大自由度な3次元音響ナビゲーションの解明
Project/Area Number |
19K15012
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山田 恭史 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 研究員 (80802561)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エコーロケーション / 構成論的研究手法 / バイオミメティクス / 生物ソナー / シンプルデザインセンシング / 空間学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究遂行により,①シンプルなデザインでの音響センシングの場合には,コウモリ同様の耳介動態を取り入れることで,3次元方向定位の精度を向上させることを数理学的に検証した.特に,②耳介動態によりドップラーシフトしたエコーと放射パルスの時間的重畳により,干渉信号の包絡線上にうなりパターンが形成され,3次元方向定位に繋がる情報が格納されている可能性が示唆された. 上述の分析により,うなり包絡パターンは低周波成分で構成されることから,サンプリング負荷を低下させる効果も期待される.これらの結果を踏まえ,うなり信号を活用した自律音響センシングシステムを構築し,実静止環境下で3次元方向定位テストを行った.その結果,③オーソドックスなセンシング手法に比べ,低いサンプリング周波数で高い定位精度のセンシングが実現できることが実機検証できた.適切な耳介動態に関する数理的分析を継続し,次年度に本提案システムをさらにブラッシュアップしたモノを実装することで,コウモリの3次元定位プロセスを理解するとともに,具体的な工学応用手法を提案していく. 現在は,自律センシングシステムのドローンへのテスト実装を一部試み,基礎的なナビゲーションプログラムの構築を行っている.ドローンが定位した情報のリアルタイムな可視化を無線通信で行うなど,実際の性能評価に必要な情報収集システムについても拡充させている段階である. 来年度からはコウモリのナビゲーション戦略について分析するとともに,モデル化を検討していく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の本年度の研究計画通り,コウモリの耳介動態が3次元方向定位プロセスもたらす有用性について評価できた.さらに,それらの結果にインスパイアされた手法で自律センシングシステムを構築し,実環境下での検証評価も行うことができた.これらの成果は,コウモリから模倣した一連の3次元ナビゲーションをドローンへと実装する上で,必要不可欠かつ根幹的なものの一つであると言える.特に,自律センシングシステムを既に構築し,機能することが確認できたことは実装を円滑に進めるうえで大きな成果であると言える.次年度は,センシングプロセスをブラッシュアップさせるとともに,コウモリの空間学習ナビゲーションの柔軟性やその適応原理について更なる研究遂行を実施する.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究遂行により,音響センシング時の耳介動態が3次元定位に有用であることを検証できたものの,どのように動態させることが3次元定位のための情報を最大化させるのかについては,未だ疑問が残る.複雑な耳介動態をコウモリから実際的に計測するには限界があることから,数値シミュレーションを用いた耳介動態方向とエコー信号の間にある関係性の分析を実施し,それらの理論化を図りたい. また次年度には,コウモリの経路計画性や飛行制御に着目した適応ナビゲーション行動に関する分析も実施する.特に,これまでその一端を明らかにしてきた空間学習ナビゲーションについてまずは検討を行う.この際,障害物の追加・撤去や音響的”見通し”の良し悪しを変化させた場合の学習ナビゲーションのふるまいの変化について計測する予定である. さらに,再来年度での自律飛行ドローンでの検証実験へ向けて,自律センシングシステムの実装作業やドローン動態計測システムの準備作業についても行うことを画策している.
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Causes of Carryover |
現在活用しているドローンのナビゲーションテストを行う中で,よりシンプルかつ小型な機体への移行を画策するに至った.このため,当初予定した研究開発用ドローンの購入と計測用PCの購入を延期する判断を行った.現在,適切なドローン機体の選定作業を行っている.次年度には,ドローン及び計測用PCの購入を完了させることを画策している. また,コロナウイルスの影響により,本年度に計画していたコウモリの音声計測や学会発表等の出張が中止になった.これにより,当初予定していた旅費を大幅に下回るに至った.しかし当初の予定通り,コウモリの耳介運動模倣に関する一定の成果を上げることができたことから,研究進捗に差しさわりはない.次年度には,コウモリの飛行計測や学会活動等への旅費の有効活用を画策している.
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Research Products
(4 results)