2019 Fiscal Year Research-status Report
Understanding Channel Conductance Mechanism of Hf-based Ferroelectric-gate FETs Toward the Artificial Neural Network Application
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19K15021
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
トープラサートポン カシディット 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (00826472)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 強誘電体FET / FeFET / デバイス物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は強誘電体ゲート絶縁膜を用いた強誘電体トランジスタにおけるデバイス動作の物理機構を明らかにすることでAIハードウェアを構成する高性能なシナプス素子に向けた設計指針の確立と動作実証を目指している。強誘電体トランジスタは強誘電体HfO2の発見以来盛んに研究されているものの、微視的なデバイス動作が十分に理解されておらず、デバイスの厳密な設計が困難であった。特に、強誘電体の大きな分極がどのように半導体で反転層を誘起しているか明らかになっていなかった。 2019年度では、強誘電体トランジスタの反転層の振る舞いを調べるために、強誘電体トランジスタ構造のままで強誘電体の分極を測定する手法(P-V on FeFET)および強誘電体トランジスタのゲート直下の全電荷を測定する手法(準静的Split C-V)を提案した。また、ゲート直下の自由電荷の測定(Hall)と組み合わせることでトラップ電荷密度も評価できるようになることを提案した。 上記の手法を用いて、試作したn-チャネルの強誘電体トランジスタ試料を評価した。試料はp型シリコン基板上に10 nmのHfZrO2強誘電絶縁膜を原子層堆積で積層してデバイス微細加工をして作製した。提案した評価法で試料を評価した結果、強誘電体トランジスタの強誘電体(HfZrO2)/半導体(Si)の界面に通常のMOSFETでは見られないような巨大なドラップ密度が発見され、その結果、Si基板に電気力線が届かず反転層が期待通り誘起されなかった。このトラップはHfZrO2とSiの間にあるSiO2界面にかかる強い電界に起因されると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
強誘電体トランジスタにおけるデバイス動作の物理機構を明らかにすべく、2019年度に強誘電体トランジスタの分極と反転層電荷密度を直接観測する手法の確立とそれらの実際の振る舞いの解明を目指した。 実際の2019年度の研究において、強誘電体の分極を測定する手法、強誘電体トランジスタのゲート直下の全電荷を測定する手法、ゲート直下の自由電荷の測定手法を確立し、実験的に検証して、研究計画通りに進んでいる。 デバイスのミクロな物理機構の理解に関しては、計画通りに強誘電体トランジスタを作製し、デバイスの評価が順調に進んでいる。デバイス評価の結果、予想していたデバイス動作とは異なり、これまで知られていたMOSFETとはまったく異なる現象(巨大なトラップ電荷密度)が起きていることを発見した。そのため、デバイスのモデル化は予想していた研究計画よりも慎重に行う必要があり、現在は取り組み中である。今回の結果を世界的権威のある電子デバイス会議IEDMで成果発表し、成果が高く認められた。(K. Toprasertpong, M. Takenaka, and S. Takagi, “Direct observation of charge dynamics in FeFET by quasi-static split C-V and hall techniques: Revealing FeFET operation,”in Technical Digest of 2019 IEEE International Electron Devices Meeting, pp. 570-573) 以上のことから、本研究は順調に進んでいるといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果により電子の反転層の振る舞いが明らかになった。今後としてはnチャネルデバイスの蓄積領域およびpチャネルデバイスの反転領域のデバイス動作を理解するために、強誘電体ゲート直下の正孔の振る舞いと強誘電体/正孔の相互作用も明らかにする必要がある。そのため、n型Si基板上に同様にHfZrO2強誘電体ゲート絶縁膜を堆積してトランジスタ構造を作製し、提案した測定手法を同様に適用して評価していく予定である。電子/強誘電体と正孔/強誘電体の相互作用が明らかになった後、メモリ窓、状態保持時間、応答速度、パルス入力に対する過渡応答など、強誘電体トランジスタのデバイス動作を記述するモデルを構築し、それに基づいてデバイスの設計を行う。 人工神経回路網のシナプス素子としては、重みの学習の際に入力に対して電気伝導が線形に変化することが望ましいが、他の研究グループによって報告されている実験結果では変化が非線形になってしまうことが多く見られる。トラップの振る舞いを含めて、どのようなデバイス構造や材料をエンジニアリングしたり、デバイス作製プロセスの改良をすると良いか、どのような入力波形を準備するとよいかを含め、本研究で得られたデバイスモデルに基づいて考察を行い、試作する予定である。また、試作したデバイスの電気特性を評価し、人工神経回路網に用いた際の計算処理速度、演算精度、消費電力、学習の精度と速度などをシミューレーションで確認する予定である。
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