2020 Fiscal Year Research-status Report
クラスタースピングラスにおけるスピン波伝搬制御及び演算処理の研究開発
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19K15022
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山原 弘靖 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (30725271)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | スピンクラスターグラス / スピン波 / 希土類鉄ガーネット / フレクソエレクトリシティ / コプレーナ線路 |
Outline of Annual Research Achievements |
スピン波伝搬制御の手法として、ジュール熱による局所加熱によってスピン波変調を実施した。スピン波の低損失伝搬で知られるイットリウム鉄ガーネット(Y3Fe5O12, YIG)薄膜上に成膜した一対の送受信マイクロ構造アンテナ(コプレーナ線路, CPWs)を基本素子とし、その間のスピン波伝搬経路上に局所加熱を可能とするPt電極を挿入した。YIG薄膜はパルスレーザー堆積法により成膜し、CPWsやPt電極はフォトリソグラフィによるマイクロ加工とスパッタ法による電極成膜により作製した。Pt電極の局所加熱によってYIG薄膜の飽和磁化を変化させ、その結果、スピン波の伝搬周波数がシフトすることを明らかにした。さらに局所加熱によってスピン波が散乱されることにより、スピン波伝搬の減衰が示された。 一方、クラスタースピングラスの材料開発について、従来は強磁性体やフェリ磁性体材料に非磁性や異方性元素を置換することで低温のスピングラス相を実現してきたが、元素置換は物質の不均一化によって一般にスピン波のダンピング定数を増加させる。本研究では元素置換に加えて、基板と薄膜の格子不整合によって生じるエピタキシャル歪みによってスピン凍結温度を高温化させることを試みた。ガーネット薄膜は2.1%の格子不整合が生じるY3Al5O12(YAG)基板上に堆積した。ここで転位が発生する臨界膜厚は12 nmが見積もられ、臨界膜厚を境として膜厚の増加に伴い格子歪み正方晶から格子緩和した立方晶へと構造が変わる。各膜厚の試料のスピン凍結温度を評価した結果、格子緩和によって高温化することが示され、格子欠陥による磁気ドメインのピニングが寄与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
希土類鉄ガーネット系におけるスピンクラスターグラスの作製及びその基礎物性の理解は順調に進展しており、材料選択だけでなく格子歪みの効果が明らかになっている。スピン波デバイスの開発について、外場制御端子の材料選択や局所加熱による伝搬制御が示され、順調に技術開発が進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
スピン波素子の特徴である位相干渉を計測するにあたり、高周波(GHz帯)の多入力に対して位相制御が必要となる。計測システムを4ポート対応に改良済であり、今後、位相干渉の計測を進めることで、スピン波演算や高感度センサの開発を実施する。
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