2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K15033
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
平石 雅俊 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特任助教 (80712653)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ミュオン / 水素 / エレクトライド / 周波数シフト |
Outline of Annual Research Achievements |
ミュオンを用いて希薄状態の水素の電子状態を調べる手法の開発を推進した。本手法は、高横磁場下でのナイトシフト測定によって得られるミュオン (Mu) の歳差周波数を精度よく測定し、擬似水素としてのミュオンの荷電状態を区別するものであり、第一原理計算との組み合わせによって、実験的に区別をつけにくいミュオンの荷電状態 (Mu+, Mu-)を決定し、実用材料中における水素の電子状態に関する知見を得ることを目指している。今年度は、コロナ禍の影響もあり、海外でのみ行える高横磁場下でのミュオン実験が行えなかったので、関連データとして予め取得していたエレクトライドと呼ばれる物質でのデータ解析と、論文執筆を行った。 エレクトライドとは、電子がアニオンとして振る舞う物質のことであり、仕事関数が低いことやアンモニア合成などに対して高い触媒活性を示すことなどから注目を集めている。アニオンとして振る舞う電子が存在することから、水素との調和性も高く、水素の電子状態に関しても興味を持たれている。 今回の対象物質であるLaScSiやY5Si3はかつて水素吸蔵合金として知られていたが、結晶構造中に電子が局在するエレクトライドであることが最近の研究によって明らかになり、注目を集めている。LaScSiHx (x=0, 1, 1,5)とY5Si3でミュオンによるナイトシフト測定を行った結果、LaScSiとY5Si3のエレクトライド組成では化学シフトでは説明できない巨大な負のシフトを観測した一方で、LaScSiHとLaScSiH1.5では水素量の増大によってシフトの絶対値が減少していることを明らかになった。高磁場下でエレクトライド電子が示すVan Vleck常磁性が負のシフトの起源であることを推察し、その結果を論文としてまとめ、Phys. Rev. B誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はコロナ禍の影響もあり、計画していた対象物質の実験が行えなかったため、予め取得していた関連データの解析と論文執筆が主となったが、エレクトライド物質中における水素の電子状態の研究が進展した。本研究についての学会発表が1件、投稿中の論文が1篇である。また、本リソースを利用した研究発表 (図書の一部) が2件ある。以上によって概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度もコロナ禍による海外渡航が困難であると予想されるため、予め測定してある関連データだけでなく、国内施設のJ-PARC (茨城県東海村)で測定した関連データも含めて解析を行い、第一原理計算による計算も組み合わせて、水素の電子状態を明らかにする研究を推進する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス (COVID-19) による渡航規制により,海外施設での実験は実施しないこととした。 旅費として割り当てていた金額は第一原理計算に必要なリソースの拡充に使用する。
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[Book] KEK-MSL report 2019 (KEK progress report ; 2020-4)2020
Author(s)
M. Hiraishi, H. Okabe, S. Nishimura, J. G. Nakamura, S. Takeshita, A. Koda, K. M. Kojima, R. Kadono, and H. Hosono
Total Pages
138
Publisher
Muon Science Laboratory, Institute of Materials Structure Science, High Energy Accelerator Research Organization