2019 Fiscal Year Research-status Report
テラヘルツ波指向性制御デバイスの実現に向けた液晶素子の理想構造の提案と作製
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19K15036
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
井上 曜 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 電気情報学群, 講師 (30723770)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 液晶 / テラヘルツ / 移相器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、アンテナから放射されたテラヘルツ波を液晶移相器へ通すことで、テラヘルツ波の指向性を制御可能なデバイスを作製することを目的とする。しかしながら、従来の液晶移相器は電界応答の高速化が課題となる。 液晶の電気光学効果の高速化を実現するために、本研究ではポリマーと液晶の混合系を用いる。ポリマー中に分散する液晶液滴は、その液滴のサイズの二乗に比例した応答時間を示す。すなわち、液晶液滴のサイズが小さいほど、液晶分子は高速に運動することができる。一方で、液滴サイズを小さくしすぎると駆動電圧が増加するため、バランスが必要となる。 テラヘルツ帯での応用を考えると、液滴のサイズは数ミクロン程度が理想的であると考えられる。そこで、本研究の主目的はこの液滴サイズの制御となる。令和元年度は、液晶液体相転移温度近傍における重合相分離により、蜂の巣のようなポリマー構造を有し、数ミクロン程度の液晶液滴を形成するポリマー液晶混合系の作製に成功し、高速・高位相変化量を同時に達成する移相器を実現した。また、導電性高分子電極を用いることでテラヘルツ波の透過損失を減少させる研究も行った。さらに、ポリマー液晶混合系の材料の最適化を行う研究を実施した。その際、複屈折の異なる液晶材料を複数用意し、位相変化量の測定をすることで比較検討を行った。材料を変化させると、ポリマーの相分離構造にも変化が起きるため、走査型電子顕微鏡を用いたモルフォロジー観察も同時に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は主にポリマー液晶混合系における液晶液滴サイズの制御に関して研究を実施し、目的となる数ミクロン程度の液滴の作製に成功したため、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
液晶の電気光学効果は上述したポリマーによる液晶閉じ込め技術により、3桁以上の高速化が実現された。今後は高速性と位相変化量の両立を目指した研究を行う。具体的には、液晶材料の複屈折、及びポリマー混合比の最適化などである。最終的には、ひとつの液晶素子で位相を90度遅延させることが可能な素子を目指す。
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Causes of Carryover |
投稿論文費用として計画していた10万円が、論文投稿料の発生しないJournal of Applied Physicsに採択されたため、残存した。令和2年度は、磁力を利用した液晶テラヘルツ移相器の提案を行っていく予定であるため、残予算はネオジウム磁石を利用した磁気回路の制作費などに利用していく予定である。
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