2020 Fiscal Year Research-status Report
半導体表面/界面における特異な電子フォノン散乱の起源の解明
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19K15050
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 貴久 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (30782081)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | シリコン / 表面 / 変形ポテンシャル / 電子フォノン散乱 / 界面 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に,シリコンナノ構造の移動度計算に関して進展があった.シリコンナノワイヤの電子フォノン散乱で制限される電子移動度について計算を行い,酸化膜による電子フォノン散乱の変化に関する考察を行った. まず,昨年度作成した分子動力学法と強結合近似法を組み合わせたプログラムを用いてシリコンナノワイヤの移動度計算を行った.ナノワイヤ断面の高さ方向に対して幅方向を長く設定することによってナノシートを模した構造を仮定した.酸化膜の被覆がない場合のナノワイヤについては,先行研究の計算結果とおおむね一致する電子移動度を得た.一方で,酸化膜で被覆されているナノワイヤでは,移動度が減少することを明らかにした.移動度の減少量は,極薄SOI中での実験的な移動度をもとにして構築された経験的モデルと整合した.実験的に観測された酸化膜による移動度低下を再現できたことから,原子位置をもとに電子フォノン散乱の変化の起源を解析した.輸送特性を計算する際に用いた分子動力学法の原子変位の分布から,酸化膜界面近傍のシリコンの原子変位が増大していることが示された.この結果から,酸化膜界面での不均一なひずみが界面に特有のフォノンの変調を発生させ,シリコンナノ構造での移動度低下につながることが示唆された. また,界面・表面の重要性について他の材料系でも考慮するため,金属系材料の抵抗率計算も開始しており,金属への吸着原子の違いによる抵抗率の変化の解析を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においてシリコンナノシートを模した構造で移動度を計算することに成功した.計算した移動度は,酸化膜を持たないナノワイヤでは先行研究の計算結果と整合し,酸化膜で被覆されたナノワイヤでは極薄SOIで提案された移動度の経験的モデルと整合した.そして,計算に用いた原子位置の解析から酸化膜界面に存在するひずみが電子移動度の低下に寄与している可能性を示唆した.以上のように,本年度で酸化膜が電子フォノン散乱の変調に与える起源まで解析を進めていることから,おおむね計画通りに研究が進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度では,シリコンの酸化膜の組成を変化させた場合とシリコンの面方位が異なる場合に酸化膜が移動度に与える影響を解析する.また,ゲルマニウムなどの材料についても計算を行う.これらの計算から,酸化膜由来の移動度低下を抑制するための指針の確立を目指す.また,界面における散乱の変化を半導体以外の金属ナノ構造についても解析を進め,LSIの配線などに応用できるか検討する.
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Causes of Carryover |
残額が100円となり2020年度に購入できる適切な物品が存在しなかったため,次年度使用額が発生した.2021年度の物品費とあわせて消耗品および備品に使用する.
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Research Products
(2 results)