2020 Fiscal Year Research-status Report
Creation of high strength concrete secondary products by low temperature autoclave curing
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19K15063
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山口 晋 日本大学, 生産工学部, 講師 (60582468)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | オートクレーブ養生 / シリカフューム / メチルセルロース / C-S-H / ポゾラン反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
提案している低温型オートクレーブ養生は,シリカフュームの混入ならびに遠心成形による遠心締固めを行った後,従来法よりも低温でオートクレーブ養生を実施し,コンクリ―トの高強度化を実現するものである.シリカフュームは,オートクレーブ養生の水熱反応によって水和が加速し,ポゾラン反応に伴うC-S-Hの多量生成による緻密化の役割を担うものであるが,遠心締固めの影響によって,供試体内面にセメントリッチな脆弱な層を形成させることから,スラッジ処理や内面ひび割れ等の対策が必要であった.本研究は,上記対策として水溶性メチルセルロースを使用した場合のコンクリートの遠心締固め性状に着目した検討を行い,次の知見が得られている. (1)セルロース添加率の違いによる遠心成形後の内面性状を見ると,添加してない0%の場合の内面性状は,凹凸の少ない均一な仕上がりであったが,約1mmのスラッジ層厚が確認された.スラッジ密度は1.48であった.これを基準とすると,添加率0.01%の場合も均一な内面性状であったが,スラッジ水の発生量は427.4gと大幅に増加はしたが,密度は1.33と低下した.0.02%以上の場合は,内面にスラッジ層が多く形成され,スラッジ水の発生量もばらつきが認められた. (2)(1)のことは,メチルセルロースがある一定量あるとコンクリートを練り混ぜるミキサーでは分散しきれずに,その効果は偏ってしまうと推察した. (3)圧縮強度は,気中養生の場合,セルロースの添加量が増加する毎に圧縮強度は低下する結果となったが,これはセルロースが自由水を保形する作用によってセメントの水和に影響したためと考えた.オートクレーブ養生後においては,添加率が高くなる程強度は低下する傾向で,気中養生とは異なり強度低下は小さくなった.これは,オートクレーブ養生によってセルロースが消滅することを示すものと考えた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究課題の進捗状況は,2020年度のコロナ禍等の社会情勢が大きく影響し,研究実績で述べた成果のみに留まっている.研究実績の概要で述べた通り,メチルセルロースの添加によって発生スラッジの密度を低下させる効果が得られたものの,発生スラッジ量は増加傾向が認められている.そのため,セルロースの0.01%以下の微量な添加量に関する検討が必要であり,これを明らかに(配合が決定)しなければ,低温オートクレーブ養生を実施した圧縮強度の検討に入ることができない.しかし,所属する研究機関の三密に伴う実験作業の自粛(中止)によって,コンクリート練り混ぜはもちろん遠心成形の実施などを含めた,人員が必要な基本実験・作業ができない状態であった.また,研究協力者である日本ヒューム(株)の熊谷工場での実験延期なども影響し,作業の進捗の大幅な遅延が生じている.
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Strategy for Future Research Activity |
研究の進捗が大幅に遅れている現状において,実験の検討項目を修正し,それに準じて効率的に研究を遂行していく予定である.当初の計画では,本研究課題で提唱している低温オートクレーブ養生の実用化を目的として,実製造工程を考慮したオートクレーブ養生前に実施する「前置き養生時間」も検討項目の一つとしていた.しかし,これまでの既往の研究成果によって,3日以上の前置き養生時間を確保すれば,150℃低温化した場合でも高強度化することが明らかとされているのため,本研究課題においても前置き養生は3日間で固定することとした.これによって,2021年度の研究計画としては,(1)メチルセルロースの添加量を0.01%以下とした場合のスラッジ発生量の検討,(2)(1)に基づく配合の確定,(3)150℃の低温オートクレーブ養生による強度発現性に検討項目を絞って研究を実施する.なお,30℃の低温化による環境負荷低減効果の確認については,研究協力者である日本ヒューム(株)の熊谷工場への出張も緩和されたので,上記(1)~(3)と並行して実施する計画としている.
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Causes of Carryover |
本研究課題の研究経費の中で使用割合の大きい「設備備品費(遠心成型機)」「消耗品(供試体作製)」については2019年度に使用したが,2020年度に使用予定であった実製造工場での検討に用いる経費については,コロナ禍における実験作業の中断を余儀なくされたことから差額が生じた. 現時点でも先行きが不明瞭な状況下が続けば,実験内容の見直しも必要であるが,現状は,従来の実験計画に基づいて,次年度前半においてこれを使用する予定であり,主な使用目的は,日本ヒューム(株)技術センターへの出張旅費に用いる計画である.
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